第7章 燐灰石の秘め事
「いやぁ、そろそろかなと思って様子見に来てみたら…すんごい仲良くなったのねえ?」
「どこがですか」
「全体的に♪」
「…首領、首領はこの餓鬼のこと…知ってんですよね?じゃないと、わざわざ…俺の直属の部下になんかしないしましてや準幹部なんて“役職を作る”必要が無い」
察しがいいね、流石だよ。
中原の問いにヘラりと笑って答える森に、中原は自身の手を掴んで離さない少女についてまた問う。
「…こいつの親は何してるんです?見たところ高校生くらいでしょう」
「絶縁状態というやつだ。とっくの昔に捨てられてる」
戸籍ごと、この世からね。
付け足された一言に、目を見開いてそちらに顔を向ければ、森は真剣な表情で眠っている少女を見つめ、撫でた。
「親から捨てられるなんてレベルのものじゃないさ、“殺されてる”んだからね…それも身体は動いたまま」
自分の事をゾンビだと言ったのは…やけに自嘲的だったのはそれで?
いや、しかし戸籍ごと剥奪されるだなんて一体何が起こればそんな事態になる。
というか、そんな事が可能な人間がいることの方にも驚きではあるのだが。
「色々あって色んな大人に狙われててね。小さい頃からずっとだけど、この前中也君が自殺してるのを阻止した日も、良くしてくれてたはずの人に裏切られた後だったそうだよ」
だから、あんまり叱らないであげてほしいのが本音なんだけどね。
困ったように言う森に、言葉が上手くまとめられない中原。
今日のこれはまだ原因は分からないということだが、それにしても、あまりにも酷な話だろうそんなもの。
自分のようなものならばともかく、とどこか自身に重ねて、少女の表情に目を移す。
「というか、よく“寝ている”ねえ?」
「…すみません、あんまり“疲れてたようなので”」
「泣き疲れちゃったとか?…まあ人前で泣いたりしない子ではあるけれど」
「………俺の目の前で泣くくらい可愛げがあるんなら、俺ももう少し甘やかしてやりますよ」
やれやれと言ったように言うその様子…ではなく、眠っている少女を見て、その言葉が嘘であることくらいは森にはお見通しであった。
そもそも不眠体質のこの少女が、普通に…ましてや、甘えもできない相手の元で眠れるなどという事態の方がおかしな話なのである。
「そんなこと言わずに、どうせならいっぱい可愛がってあげておくれ」