第6章 スカビオサの予兆
以前とは違って無理矢理仕事を手伝おうとする素振りは見せず、大人しく布団を被って…先程から俺を凝視しては照れてを繰り返している様子のリア。
なるほど、俺に対してはだいぶ遠慮しなくなってきてくれてるらしいなこりゃ。
「リアちゃん?そんなに俺のこと見てて楽しいか?」
『ん、リア楽しい』
「そ、そうか」
すんげえ頷かれた。
えらい物好きになったもんだこいつも。
手前の上司が事務作業してるのを眺めてるのがそんなにいいか。
ソファーに寝かせたのだって、すぐ隣に椅子を持ってきて作業をするために他ならず、頭を撫でてやると嬉しそうにしてそこに頬擦りしてきやがる。
耳生えてたら完璧狐だよなぁ…なんでこういうことしてくれんのこいつは。
あー仕事辞めようかなもう。
悟りを開いたところで正気に戻った。
いや、正直こいつのためなら辞められるけど。
禁煙だって成功してるし。
酒だってそんなに飲まなくてもやってられるようになってきてるし。
えっ、なんだそれすごくね?こいつ。
ふと、手を両手で包まれて、柔らかい感触がちぅ、と手の甲に触れる。
思わずがばっとそちらを見ると手袋を外した素手にそいつが口付けていて、一瞬で離されはしたもののチラリとこちらの出方を伺っているようだった。
は、…可愛。
「…キスしてくれたのか?可愛いことしてくれんじゃん」
『……風邪、移っちゃうからその、』
「ああ、成程?…俺のために我慢してる?」
『し、してない』
「ふうん…喜んで唇でもOKするけど?」
『へっ、本当??』
「お前ほんと素直なのな」
ぽんぽん、と撫でてから軽く唇にキスで返してやれば、ぽけっとした顔をそのまままた紅くさせていく。
遠慮しなくていいのにそんなこと。
風邪とかひかねえし俺。
「いいよ、移すかもとか気にしなくても。そんなこと気にしてくれちまうお前の方が気になるわ俺」
『、…き、ききき勤務中!!です!!』
「仕事しながらだからいいだろ別に」
『あ、ぅ…っ…、…が、まんさせて下さい…こういうの、は』
「やだよ、大事にしてえのに」
しっかりしてるよな。
甘えちまえばいいものを…ただでさえまだ子供だってのに。
『…欲しく、なっちゃうから……やだ、』
「……だから、してやるっつの。ほら、こっち向け」
『ぁ、っ…ン、ぅ……♡、…♡♡』