第6章 スカビオサの予兆
「偉いじゃねえか、今ちゃんと自分から全部伝えてくれたぞ?お前…前までじゃ考えられねえような成長ぶりだ」
『っ、?…あ、ぇ…』
「…俺に心配させないようにって…俺のせいって思わないようにって、一人で耐えてくれちまってたんだろ?」
だから、強いやつだなって。
そう思うんだと、先にちゃんと、彼女の心を肯定してやらないと。
今にも消えてしまいそうで。
壊れきってしまいしうで。
『っ感じ、たくなかった…っ……異物感だっ、て…やだったもん、ッ』
「うん」
『やだ、って言っ…た、ら酷、くなっ……首、しめられ、ながらされる、のに感じ、るようにさせられ、てッ…』
それらの言葉には聞き覚えがある。
ああ、だから俺に先に自分から言ったのか。
決して好きなわけじゃないくせに、恐怖に感じる目合いなんて。
元々純粋なこいつがそんな性癖を持ち合わせている方がよっぽどおかしな話であって。
「…いつ、からか…教えられるか?」
『…見つかって、から』
言い回しに少しひっかかる。
まるで、そいつと出会すのを避けていたかのような言い方だ、それじゃあ。
「もしかして、組織に入る前からの知り合いか」
『………あ、…の……あの、ね…ッ、あの…、』
____初めて、とった人…で、
消え入りそうな声で紡いでくれたそれは、彼女のトラウマとも呼べる事の発端でしかなかった例の事件だ。
この場で口にした初めてという言葉が意味するのは処女であった事実のことで、そしてそれをとったということは…必然的に、太宰の野郎が見つけてしまった、その犯行現場においての加害者側によって奪われたものであって。
なんてことだよ、知り合いどころの話じゃない。
そんなやつがうちにいるだなんて、聞いてねえし悟らせてさえくれなかった。
「…組織、入ってから…手荒く扱われた?」
『……尻尾、掴まれた、ら力抜けちゃって…、……縛、ら、れたらあの…り、リア力、強くない、から逃げ、られな…』
「……他は?嫌だったこと…ついでに吐き出しとけ。全部俺しか聞いてない」
『っ、…キ、スも、され、たの』
身体、全部見られて、まさぐられて、たまに他人に使わせたりして。
やなもの飲まされて、咥えさせられて。
叩かれたり、蹴られたり踏まれたり。
切りつけられたり、撃たれたりもしたのだと。
鱗を引きちぎられもしたと、彼女は言った。