第6章 スカビオサの予兆
思わず息を飲み、呼吸を忘れてしまいそうになるほどの美しさ。
可憐な少女にそんな姿で抱きつかれてしまっては…こんなに綺麗になられてしまっては、手を出すのでさえ恐れ多く感じてしまうというのに、このお嬢様ときたら。
「せめて胸。何か隠してくんねぇすか」
『…お嫌い?』
「大事なとこだろ、お前の」
『……じゃあ中原さんが大事にしたげて』
とんでもないことを言い始めてくれてしまう。
いや、分かった、分かったからとりあえずそのまま押し付けてくるんじゃねえ引っ込みつかなくなっちまう。
「はいはい、じゃあとりあえず布でも巻いてて下さ…おい、少し離れろ、巻いてやれねえだろ」
『、…見、ちゃあの…』
あー…そういう?
そこで恥じらうとかなんなのお前の基準、意味わかんねえけどとりあえず煽んねえでくれないか、襲うぞ。
「…お前さぁ、好きな女にこんな事されてて平気でいられる男の割合ってどの程度だと思う?」
『、?中原さんは女の人に興味無いでしょう??』
「相手がリアなら話が別だって分かんねえ?」
『へ…、ッ、!?あっ、あぅ、…!』
手首を掴んで無理矢理押し倒す…そしてそれから両手の指を絡めて、つなぐ。
仰向けになって視界が反転したところで、髪以外に隠すものがないと気が付いた彼女は身をよじらせようとするのだが、俺がそれを許さない。
『や、ぁ…だ、見な、っ…』
「綺麗なもんだな、ほんと」
『ふえ、ッ…!!?、あ、っ…何し…ッひ、!!♡』
片手を離して、形に添わせて胸の膨らみを撫でると手のひらに吸い付いてくるかのように滑らかで、柔らかい。
改めて、女であるのだと俺にそれを訴えかけてくる。
「…柔らけ、」
『っっ、!!!』
ぶわわっ、と顔が更に真っ赤になるのと共に、下半身がビクッと跳ね、ベッドに尾ひれを叩きつける。
「あんま派手に暴れんな、傷付いたら困る」
『っ、う、鱗、だよ…ッ!?ひれだって付いて…』
「変わんねえよ、綺麗なもんは綺麗なんだから諦めて可愛がられてな…それにお前が変わったわけじゃあるめえし。そんなビクビクしてんのもいつものことじゃねぇか」
ここも、ここも…こっちも変わんねえよ。
言いながら、耳、首筋に鎖骨、胸元、お腹へと撫でていき、ヒップにあたる鱗の上から撫でて見れば、わずかだがその身体を震わせる。
やっぱり、何も変わらねえ。