第6章 スカビオサの予兆
立原の提案によって決定した行先は、アフタヌーンティー形式で紅茶も楽しめるという、まあ思いっきり女子ウケを狙ったような、しかしクラシカルな洋装の店。
よくこんな所知ってんなぁあいつ、なんて思っていれば、そこに湧いた疑問にはリアが答えを返してくれる。
『立原君、結構こういうところ知ってるみたいよ。会社付き合いっていうか、仲良い人にリクエストされるんだって』
「!?あいつ交際相手いんのか!!?」
『ううん、どっちかっていうと先輩。交際どころかそれこそ尻に敷かれてる感じ』
政府の部隊の人にせがまれると聞いたことがある。
自分が新入りの方なのもあって、あやし役にされるのだとかなんとか。
「お前らいつの間にそんなに仲良く…良かったじゃねえか友達出来て」
『…妬かないの?』
「正直妬くけどそれよか純粋に嬉しいよ、お前放っといたら俺としかいねえから」
『えっ、』
ピシッと固まってしまったリアに、一瞬で嬉しい心地が消し飛ばされたような気がした。
なんだそのリアクションは、おい待て、お前また何を思った??
『…だ、だから嬉しい、の……?』
「?お、おう…??」
ゆっくりと俺の腕に回していた両手を離してどこかに走り去ろうとしたその瞬間に首根っこを捕まえて、なんとか捕獲する。
「待て待て待て!!なんで逃げんだよそこで!!?」
『だ、だだだだって良かったって、!』
「そりゃそうだろ、折角仲良く出来るやつが増えたってのに何を__」
『ず、ずっと一緒にいられるのしんどくなってきたんでしょうッ、!!?』
あっ、やっと分かったぞ、手前またとんでもない勘違いを…どうしてそう自己嫌悪に陥る思考にばかり走るんだ、どれだけ自信が無いんだお前は可愛いなぁ本当に…
「なわけねえだろ、ったく…お前に、良くしてくれるやつとかお前が信頼出来る人間が増えたのが嬉しいんだよ。俺以外にも、もっと力になってくれる奴がいるって頼もしいだろ?」
『…、だ、から…か、解放されたいんじゃ…っ』
「あ?シークレットサービスなめんなよご主人様……もしも俺が力不足だったり、お前が俺に甘えにくい時なんかに頼れるだろっつってんだ。二の次にな」
分かったか?としゃがんで問いかければちゃんと俺の目を見てから、恥ずかしそうにしてようやっと頷いてくれる。
よしよし一歩成長だ…出来が悪い奴って可愛いんだよな。