第6章 スカビオサの予兆
「んで、これか...よく寝てんなぁ、助かるよ、リアの奴万年睡眠不足だから」
「万年って、それ結構キツい話っすねまた」
首領への報告と話し合いが少し長くかかってしまったので急いで食堂へと足を運ぶ。
しかし、そこで目にしたのはVIPルームにてソファーの上で、すよすよと気持ちよさそうに立原に寝かしつけられてるリアの姿だった。
勿論最初は驚いたけれど、まあ立原は良い奴だからなと素直に納得出来る。
「...もしかして、また何か聞いてくれたか?なんかまた溜め込んでそうな顔してやがる」
「ちゃんと見てるんすね、正直意外です」
「どういう意味だそれ、こいつのことなら見てるさそりゃ」
尻尾を九本生やしきってまで寝てるだなんて、こんな無防備なこと滅多にしないのに。
さてはやっぱり何か思いつめさせてたな?
遠慮しいにも程があんだよお前。
「ろくな目に遭ってきてなかった分だとでも思って甘やかされてくれりゃいいのによ、ほんと」
「!遠慮してんの気付いてたんすね」
「当たり前だろ、常にこれだぞ?こいつ的にはここでこんな風にヤケ食いすんのが嫌がらせレベルのわがままだとでも思ってるみたいだけどな」
「デートに連れてかれんの、申し訳ないっつってましたよ?」
「知ってるさ。けど無理矢理にでも慣れさせねぇと、こいついくらでも自分でなんとかしちまうから」
サラ、と髪に手を通すと俺の存在に気が付いたのか、珍しいことにスっと目を開けてこちらの手に擦り寄ってくる。
『...ん、...なかはらさ...♡』
「おう、おはようリアちゃん」
『んん...♡...、?...えっ』
意識を覚醒させたのか、俺の手を見て固まられる。
ぎゅぅ、と両手で抱きしめてくれてしまっているの手を見て、やっと我に返ったらしい。
俺的にはずっとそうされててもいいくらいなんだが。
『.....本物?』
「疑わしいなら悟ってみな?...照れ隠しなら聞いてやんねぇぞ」
すると、彼女は再び俺の手に擦り寄ってきて、そこから離れなくなる。
が、それがどうした...やけに震えてやがるじゃねえか。
『あ、の...お疲れ様です』
「お前のせいだけどな?」
『...怒ってる、?』
「いんや?デートに誘いに来た」
「な、ッッ」
何してんだこいつ、とでも言うような目で立原に見られたような気がした。