第6章 スカビオサの予兆
「嫌じゃないらしいから、君は下がっていたまえよ三下君。幹部にこれ以上、意見するというのかい?」
「今のこの図を…他の幹部ないし、首領が見つければその意見も通るかと思いますが?」
それに俺の所属は、首領直属の派閥なんで。
敵対したところで、この場で殺されるというようにはされないはずだと、暗に伝えながら彼はまだAに食い下がってくれるらしい。
私なんかのために、なにもそんなリスク冒さなくたっていいはずなのに。
と、立原君が話をしてくれる間に、Aのもう片方の手がトップスに入り、背筋を撫でる。
『ッ、…っ、ン…ふ、…』
弱い所に触れられ始めれば、さしもの私にも余裕など無くなっていくわけで。
ガタ、とテーブルに突っ伏すようにして情けない声をあげるのを我慢するのに、背中の手が動くのをやめてくれない。
なんて思っていれば下着のホックまで外されてしまい、そこであまりの羞恥に人前で涙が溢れそうになる。
「あんた、…っおい、女…それもまだ子供だぞ!?組織の幹部がそんな真似していいのかよ!!?」
「いいんだよ、どの道“これ”は私のモノなのだから」
『!、…違…っ』
「…着いてきたまえ、このまま…君の上司に見られるのは本望ではないだろう?“海音”」
ビク、と身体が嫌な痙攣を起こし、心臓が一瞬止まったような感覚さえ襲ってくる。
やば、冷や汗止まんない。
やっぱ慣れない、この人は…隠せるかな、今一緒に住んでるのに。
ほら、やっぱりデートなんて、連れていってもらっていいような女じゃないから、こんな奴。
「て、め…ッ」
『…、は…ぃ』
生えていた耳が消え、いい子だと温かみも何も無い声で褒められて、撫でられて。
言われるように席を立とうとする。
しかし腰が抜けたようで上手く立てずに床に落ちて、それから。
あ、れ…おかしい、膝、力入んない。
変だな、この人にこんな事されるなんて、今に始まったことじゃな____
コホッ、コホ、
聞こえる咳払いの音。
そして目の前で、Aとの間の空間を阻むように入ってくる黒獣…羅生門。
「…騒がしい、なんの騒ぎだ…立原」
「!!あ、いや…な、なんでこんなところに!?」
「白縹リアは、僕が監視…そして保護を仰せつかっている。首領直々にな。何をしている?」
「…ふむ、面白い。いや何、久しぶりに会ったものだから話をしていたんだよ」