第6章 スカビオサの予兆
「お前よく飽きずにそんなに食えるよなぁ…しかもそれ、もしかしてまた…」
『ん、当たり前』
中也さんから盗ってきた。
言わずと目の前に同席する相手、立原道造君にはバレている。
「んで?たまたままた俺がいたからいいとして、仕事だったり非番だったりしてたらどうするつもりなんだよこういう時」
『?呼びに行く…』
「お前にとって俺って何?」
『従僕』
「前より扱い酷くなってんぞおい!?」
勢いよく突っ込まれるも、目の前に広がる皿に盛られた料理達を平らげていく。
『…ねえ立原君、あの人さぁ、何でもかんでも私の分は払っちゃうくせしてまた今日も帰りにどこか寄っていかないかなとか言い始めるのよ。どう思う?ダメよねこんな関係』
「あ?なんでだよ、お前、そのあの人とやらの彼女な上にまだ子供じゃねえか」
『今なんつった?猟け「ああああああっと、そうだな、レディーだ!立派なレディー!!」…やっぱりガキ扱いされてんのかなぁ』
食べながら、気分が沈む。
別にデートするのが嫌いなわけじゃない。
一緒にいて楽しいし、色んなところに連れて行ってもらえて新鮮だし、何より彼も嬉しそうなのが嬉しいから。
だけど、経済的に自立できるくらいには稼ぎがあるのにも関わらずこんなにも一方的なのは少し、気が引けるというか。
「ガキ扱いっつうか、年相応の扱いじゃねえの?どう言ったってあの人のが歳上だし、人によっちゃあ年下の恋人相手ならそんなもんだぜ」
『ふぅん?私ただでさえあの人に経済的に負担ばっかかけてるのにそれ言える?』
「そのレベルはまあ中々見ねぇけど、あれだろ。お前のこと育ててるっつうだけあるんじゃねえ?親みたいなもんじゃねえか」
『親がどうして子供にお金を注ぎ込むの?』
「は???」
ポロ、と彼が食べようとしていた料理が皿に落ちる。
それから驚愕したような顔をこちらに向けて、間抜けにも口を閉じずにパクパクさせている立原君。
写真撮っとこ。
『いや、だって意味分かんなくない?血さえ繋がってないのに余計変なのもそうだけど、なんで「待て待て待て!!?」何?』
「いや、だって子供育てるのには資金がいるだろ!!食べ物でも服でもなんでも!!それに外出することだってあるわけだし…ッ」
『私、お母さんともお父さんとも外出とかした事ないよ』
「え…、…っ?」