第6章 スカビオサの予兆
「お前さ、俺が家での交際だけで満足するタチに見えるわけ?」
『ヤサシイジョウシダカラ』
「言うならせめて心を込めて言おうなぁ?サボり魔この野郎が」
ギリギリギリ、と頭を掴んで首領の元まで報告しに行く。
これから暫くの間の太宰の護衛体制についてと、それから作戦について。
『痛、いたいいたい!!っ…、な、中原幹部……ッ』
「っっぐ、!!?!?」
かわ……っ、いいじゃねえかこんにゃろう…ッ!!?
何が中原幹部だ、初めて呼ばれた気がするぞお前には!?
「そ、そんな泣くな!?泣くほど痛かったか!!?あああああそうだなそうだな、俺が悪かったよお前がいるだけでも満足出来るのに、何でもかんでも甘やかそうとして!!」
全力で優しく撫で回す方向へとシフトした。
油断してた、そうだったこいつも女の子…なんならそんじょそこいらの奴らよかよっぽど純粋な…
『本当そうですよね。じゃ、お詫びで首領に報告と、私の作戦は宣言通り続行するってこと伝えといてください。ああ、私は終わるまで食堂で何か食べてるんでごゆっくり♡』
サッと抜き取られる幹部用ICカード。
そして、流していた涙はどこへやら、ペロリと舌を出して華麗に腕から抜け出してしまったそいつ。
………ああああ!!?!?
『じゃ、そゆことで!』
「そゆことでじゃねええええ!!!おい待ちやがれッ、もう首領が態々部屋に戻られるって時間になっ「中原さん、首領がお待ちです。こちらへ」ッおおおおい!!!おい待て手前ら!?白縹があっちに逃げちまってんだよ!!」
「?白縹殿、が…どちらに??」
キョトンとした顔で、黒服二人が辺りを見渡して確認する。
嫌な汗が流れてきた。
あいつ、まさか…っ
「…、!!!い、いねぇ…!!?」
「さ、先程から幹部はお一人で何か怒っていらっしゃるようでして…失礼ながら少し様子を伺わせて頂いてたのですが、」
やられた。
あいつ、また狐の技か何か使って逃げやがった。
常套手段だ、俺にしか尻尾掴ませるような真似しねえ上にそれで俺をおちょくってやが……いや、待てよ?
そういやそれも、ただただ懐いてるとか気を引きたかったとかだとつい最近判明していたような気が。
「…ふっ、まあいい。分かった、連れて行け」
「!?き、今日は捜索されなくてもよいのですか、?」
「いい。居場所は分かってるから」