第6章 スカビオサの予兆
「…お前、まさか俺にも“こんなこと”してねえよなぁ」
『今はね』
「!!?」
いつだ、そんな素振り見せた事も無かったくせに。
と言うのも、話は病室を出る所から。
太宰に説得というか、半ば脅される形で引くことになったはずが、リアはその言葉の合間を縫って反論させないような護衛策を思いついてしまったのだ。
奴の病室、しいては病院付近や病院内に数体、リアの分身を付けておくという荒業にでたリアなのだが、確かにそれならばと遠慮しきれなかったのである。
あの太宰がだ。
『デメリットは正直なところない話だもの』
「…そんなに心配なら、部下でもつけときゃいい話なのにか?」
『体裁として敵対組織の主力なのに、そんなこと言えるわけないじゃないですか』
「ふぅん…お前優しいなぁ」
そこまでして、護りたいのだろう。
それだけの力を持っているということだ、大体なんだよ分身って、そんな事しなくても十分強いのにチートかこいつ。
逆に言えば、未来視した中にいた俺は、それ程の力を持つリアでさえもが圧倒的な力でねじ伏せられた末に命を落とすことになったらしいのだが…益々信じられない話だ。
しかし、こいつは助けられるからこそこのように冷静を保てているから…そういうことで。
「なぁ、これから一旦拠点に戻るけど、仕事終わったらどうする?」
『仕事中に勤務後の話ですかクソ幹部』
「お前は肩の力抜けなさすぎんだよクソ新入り」
『仕事で生真面目が売りな人が何言ってんですか、あれだけ私がサボってたの咎めたくせに』
「サボりも何も手腕が良かっただけの話だろ阿呆、仕事終わらせてから帰ってたくせしてなに威張ってやがる」
『………デェト、しようって…言ってるように、しか聞こえない…です、けどそれ』
「分かってんじゃねえか」
『へ、』
そんなに今更恥ずかしがることでもないだろうに。
…いや、けどその辺かなり子供だったなこいつ。
経験ねえっつってたし。
「どっか寄り道して帰ろうぜ。どうせ、こっから暫くはデカい戦闘続きになるんだろ?参謀長さん」
『!』
半分勘だ、こんなもの。
なんとなく、分かる。
「花屋のデートは途中退場されちまったからなぁ俺」
『ぅ、…い、やあの……』
「あ?どこ行きたいって?」
『…中也さん家』
「……お前苦手じゃん」
『じゃあ家』
こいつ…