第6章 スカビオサの予兆
『ねえ、無理しなくていいんですけど…?』
「っせぇな、手前太宰と二人でよろしくするってのか?あ??」
『よろしくって何ですか』
「は?よろしくっつったらほらあの…あれだよ」
『どれですかそれ』
あれだっつってんだろ、と無茶な返しを続けるのだが、やけに理解が追いついていないような。
からかっているわけでもなさそうだし、かと言って煽っているわけでも…あ?もしかして今心読んでねえのかこいつ。
「…ほんとに分かんねえの?」
『だ、だからさっきからそう言って…』
「へえ…ピュアだな、お前」
『え…は、はあ!!?』
そうか、そういや恋愛経験はなかったんだっけ。
可愛らしいところあるじゃねえかこの純粋野郎め。
尻尾一本生えたのバレバレだぞおい。
「とにかく、ポートマフィアの為に仕方なくあいつを利用してやるだけだからな?」
『…仲良くしないで欲しいの?』
「たりめぇだろんなも…いや!?お前があいつのこと大事にしてるのくらい分かってるからな!?大人だからな俺は!!!」
『言ってくれたら言うこと聞くのに』
「そ、そういうのはいいんだよ聞かなくて……大事にしろ、自分の気持ち」
やらねぇけど。
『…まあ、とりあえず太宰さんの考えそうなことなら大体検討付きますから、とりあえず連絡を……?』
リアが手に携帯取ろうとしたところで、無意識に悟った。
何かが、ある。
「……どうした、震えてんぞ」
『…びょ、いん……車で横から追突され____』
「病院だな、入院中か?ついにくたばんのかあのクソ鯖」
『へ…え、い、生きてる』
「あ?そりゃ残念だ…またうるさくなんぞ?お前が見舞いになんて行きゃあ」
『仕事だもん』
「見舞いでいいけど?」
『お花屋さんデートしよう?』
ほんとわかり易いなこいつ。
そんなに気遣わなくていいのに、相手は俺なんだから。
…いや、俺だからこそ気を使っているのだろうか。
相手が太宰治だからこそ。
「なにそれ、デートなのか?」
『な……あ、えと…中也さん、にもお花!』
「!俺にも?なんでだよ」
『いらない?』
「寧ろ俺が贈る側だろ、こういうのは」
口にして気づく。
あんまり女扱いばかりすると余計に気遣うっけ、そういえば。
なんて思うも、彼女からは反応がない。
「…?」
『……リ、ア…お花もらったこと、ないよ』