第6章 スカビオサの予兆
「…というわけで紅葉君は探偵社で身柄確保状態。そしてQは行方しれず…Qの行き先について心当たりはあるかね?」
『だから出すのに反対だっつったのに出すからこんな面倒事になるんでしょ、控えめに言って自分で探してくれませんか』
「そこをお願いだよりあちゃああああんっ!!!!」
「お前人におぶられといてよくそこまで言えるよな」
『…降ろすの?』
「降ろさねえから泣くなよ!!?」
リアもリアだが首領も首領だ、こんなやり取り。
出勤したはいいものの、現状の打開策をリアに求める…までもよしとして、結果的にリアの言ったようにQが厄介な火種になりそうな状況になっている。
もしもアレが悪用されようものなら、とんでもない厄災にさえなりかねない。
それにQ自身の意思さえ掴めないのに、どうしろってんだ。
…ああいや、そうか、だからこそのリアなのか。
「…あの、首領。お言葉ですが、悟りの能力を宛にしようってことなら…自分は賛同しかねます。そのように扱われるのであれば、代わりに自分が動く所存です」
「!おや、中也君が素直…どうしたんだい急に?」
「急にも何も、Qを牢から出すと押し切るために散々利用されましたからね」
「あー…あ、うん、そうだねぇ……でも君が動いたら結果的にリアちゃんも動いちゃうんじゃ…?」
そもそもつい先日、芥川が組合の幹部を倒して梶井と共に拠点を沈めることに成功したばかりなのだ。
そこまで急くような事態ではないはずなのだが。
『…じゃあ首領、私がQの事見つけたら、私のお願いなんでも一つ叶えてくれますか?』
「んん?珍しいね、リアちゃんがお願いなんて。…君は馬鹿なお願いなんてしないだろうし、いいけれど?」
それならいいや、なんて呟いて、彼女の変化が解け、耳も尾も消える。
それから暫くするとふ、と彼女に意識が戻ったように空気が元に戻り、息を吐く。
『……ありゃりゃ…首領、私が思ってた通りの感じになっちゃってますよ?どうするんですかこれ』
「ふむ、成程。どうすればいい?」
会話が高次元すぎて理解できない。
俺がここに存在する意味といえば、せいぜいリアの椅子役のようなものだろうか。
『死者が大量に出るのは目に見えてますね。とりあえず急ぐのは、“太宰治の保護”と“人形の獲得”。この二つです』
「分かった、じゃあ太宰君は君に任せよう」