第6章 スカビオサの予兆
「そうか、それならそれで配慮してやんのに…恥ずかしくて出てこなかったのか?さっきも」
『…っ、……こ、いびととか分かんない、し…なん、か……ここ、いっぱい中原さんの気配がするからッ』
気配?
気配って、そりゃ俺とこんだけ密着してりゃ気配も何も…いや待て、そういうニュアンスじゃないなこれは。
「気配ってそれは…その、どういうあれだ?」
『へ、…え………家具と、か大事にしてるか、ら…っ……お気に入りの食器とかワインとかか、らも全部その…中原さん、が入ってき…ッぁ、…』
意識させたのがいけなかった。
少し暴走気味だこれじゃ。
悟りの能力を完全に見誤っていた、そうか、そんなことになっていたなんて。
「…だから、直接触れるとやばそうって?」
『……、リアより愛されてる家具とかキライ』
「待て、家具に嫉妬してんのかお前」
『楽しそうなの、にリアいないし…』
「その能力マジでなんでも有りだな?」
『リアのこと思い出してたら頭抱えたりイライラしたりばっかで』
「そりゃ手前の日頃の行いだろ、契約する前までの態度考えろやおい」
なんてことだ、なんて愛らしいんだ。
そうなるとあれか、先程珈琲を微糖にするとか言っていたのも、俺がたまに好んで飲んでいたものを読み取ったからだったのか。
どこまで気が利くんだよ本当に。
『…誰、考えて抜いたんですか』
「あ?………あああぁ!!!?!?」
が、唐突に差し向けられる質問はやけに直球な投球で。
『一人、でシた、の…っ……そ、なのリアがいくらでもするのにッ』
「ば、かてめ、っ…、っぁぁあ、そういうのはしなくていいしそもそもそういうあれじゃねえからな!?足りてねえとかじゃないから本当に!!我慢してねぇから俺!!な!!?」
何って…ナニか。
そんなところまでお見通しか、流石俺のリア、天才だよお前は…
『……、ねちっこいの、好きなんだ』
「!!!、…悪ぃか」
『…きょ、う…ずっと興奮してた、の知ってる』
「……それは悪いと思ってる」
『い、い。…あ、のでも、その……………えっち、して欲し…』
「え…」
最大級のデレと言うやつだろうか。
お誘いというやつか?そうなのか?
何に興奮したんだ、俺か、そうかそうか…いやマジか。
なんだよコイツ、可愛いじゃねぇか。
『…こ、こ…いた、ら頭おかしくなる…っ』