第6章 スカビオサの予兆
撫でてあやして、甘やかして。
それでもどこかに上がろうとせず、床から離れることを拒むリア。
俺にベッタリくっついて離れねぇくせに。
「リアちゃん、俺ソファー座りてぇんだけど」
『ぁ、…どぞ』
「いや来いや」
『!!?なんで、!?』
「なんでもなにも客人だろが手前、せめて茶くらいいれさせろ」
『り、リアがいれる!!!微糖の珈琲いれるの!!!』
バッと急にやる気になって、俺から逃げるようにして台所へ駆け出すリア…の、尻尾を思わず掴んで引き止める。
「おいっ、まてやコラ大人しくしてやがれバカ狐!!」
『ッッッ、!!!?!、!?』
が、それが尻尾であると気付いた時にはもう遅く、彼女は身体を痙攣させるようにビクつかせ、そのままがく、と床に崩れてしまったのだ。
右手を見てそれを確認し、恐る恐る手を離す。
「…!り、リア悪い、思いっきり掴んじまった!!だいじょ____」
すぐに駆けつけて身体を起こしてやり、腕で支えるも震えている。
ああああやっちまった、尻尾苦手なの分かってたのに。
『っふ、ぁ…ど、S…クソ上司…ッ』
「お前その口調俺から移ってねぇか!!?そんな顔して言っても煽ってるからなそれ!?」
『立て、な…っ…あ、しおかし…、』
どうやら脚が思うように動かせないらしい。
感覚が軽く麻痺しているのだろう。
そんなにキツいか、発情期でなくとも…いや、そもそも敏感な場所だとは散々に知らされていたのだが。
『……、なか、はらさんの部屋なん、か………こん、な…初め、て…なの、に…っ』
おお?
今なんつったこいつ、口悪ぃと見せかけといて何盛大にデレ始めてくれてやがんだもっとやれ。
「…俺の部屋だと何かあんの?」
『!!!、…ぇあ、…な、でもな…』
一瞬で顔が真っ赤になって、やけに大人しくなる。
お?
…どうした??
「いや、なんでもないって反応じゃねえだろそれ。いいから言えよ」
『い、ってる…ずっと言って、リア言ってるのに馬鹿なんだもんクソ上司…っ』
「よぉしいい子だ、お口と威勢がとんでもなくいい子だなぁ本当に」
本気でしばいてやろうかとさえ思ったが我慢だ、耐えろ俺。
言ってる?ずっと言ってるって、一体何を…
「……あ、…あ??…お前、もしかして俺の部屋だから緊張してんのか?」
図星だとでも言うように目をそらされた。
おお…?