第6章 スカビオサの予兆
強硬手段だったとはいえいいようにしてくれた蜻蛉には制裁を…と思ったがそうも出来ず、なんならこれこそがこいつの狙いだったような気さえして。
気付いた時には蜻蛉は部屋を出ていたらしく、俺とリアの二人になっていた。
「……声出すの、しんどいか」
『!、…ぅ、……あ、』
「いいよ、無理すんな…悪い。今敏感なの分かってっけど…撫でて、いいか」
素直に問うと、何とか動かしにくい腕を俺の首元に回そうとして、彼女は応えてくれる。
だから先にそれを回させてやってから、彼女を抱きしめたまま撫でる。
その刹那、ビクビクッ、と痙攣したかと思えば頭を俺の胸元にぐ、と押し付けながら腰をガクガク震わせた。
「、?…リア、お前もしかしてイっ『ッッあ、っ!、!?!?』!一旦落ち着け、震え止まんなくなってきてる」
『ク、るの…とまんな…っ…たす、け…!!、たす…あ、ぁ…、』
明らかに、やり過ぎだ。
本人が怖がることくらい、分かってた。
最近やっと、リアが心地よくなるよう、限度が掴めてきた俺だからこそ早く止めなければならなかった。
「っ、…こっち向け!」
頭を撫でていた手を顎に添え、無理矢理上を向かせて唇を塞ぐ。
『ン…ッ、!!、!!?』
バタッ、と尾が大きく床を叩く。
しかし震え方が変わってきて、次第に大きく、そして深く痙攣するようになっていく。
「………、息、吸え。…深呼吸、無理なら俺が呼吸させてやる…イって、いい。焦んなくていい」
呼吸の仕方は教えたはずだ。
キスする時の、息の吸い方。
それさえ思い出してくれれば、無理矢理身体を落ち着かせられるはず。
こいつ、今擬似的に脳イきしかけてやがった。
流石にそこまでいくと余計にトラウマもんになっちまうだろ…
長く口付けるのを繰り返す内に、痙攣する感覚が開いていく。
「ン。いい子…偉いぞリア、息吸えてる」
頭を撫でても、肩が反応する程度におさまってきた。
かと思えば、ズル、と身体がずり落ちるように脱力しきってしまう。
それを支えれば自力で呼吸ができるようになってきたことが確認できたので、彼女に触れたまま、頭を撫で続けた。
『ぁ…れ、……うご、かな…』
「…いいよ、俺が何でもするから。……どこ行きたい?」
『え…、……なかはらさ、とこ』
「……!もしかしてそれ、…俺ん家、?」