第6章 スカビオサの予兆
ナカに指すら挿入せず、ただ撫でるだけでリアの思考を奪っていく蜻蛉は本当に手馴れた様子だった。
そして、本番行為はしたことがないということは本当であるらしく…なのにリアの弱点は把握しきっているという経験値。
とうのリア本人はといえば。
『…、ッ……ァ…、…ぁ…』
だらしなくぐったりしきった様子で、意識を飛ばしそうになって飛べずに朦朧としている。
こんなにされているこいつを見るのは初めてなのだが…まあ蜻蛉のやり方は、確かにこいつに対して有効な手段なのだろう。
自分の立ち回りも、何となく分かる。
「ふはは、まだ甘えぬか?このままではさぞ苦しかろう?中也殿に甘えつけばよいではないか」
『ゃ……ら、…』
「…そんなに好きか」
『……、』
うんともすんとも返ってこない。
首を振る気力も無いのだろう。
しかし、否定をしないということは肯定しているようなもの。
「まあ、貴様が私以上に気に入った男だ。そりゃあそうか…それじゃあリア、私の命令を聞こう。その方が賢明だぞ?……甘え方を忘れるな」
『…ぃらな、い』
「まだ言うか」
『ひ、ッッ…!!!!』
指で陰核を弾き、バラ鞭を首元や耳にかかるように這わせればそれにさえ身悶えで息を不自然に吐いていて。
「……蜻蛉、その辺にしてやってくれ。やり過ぎだ」
「…やけに甘いな」
「いいだろ、俺にも原因はある」
『!!!ぁ、…なか、は…ぁ、あ…っ』
「!!?!?、どう…どうし、…ッ!!?」
ようやく俺の声が耳に届いたとでも言うのだろうか。
見れば、強ばっていた表情が耐えきれなくなったと言わんばかりに崩壊して、決壊したかのように涙がボロボロと溢れ出していた。
ようやっとまともに直視した彼女の表情は酷いもので、やはり手酷く扱い過ぎていたらしい。
「随分と甘い男だな。飴をやるには早すぎるぞ…リア、貴様あれだけいやがっていただろう」
拘束具を外してやるとダラ、と力の抜け切った彼女の身体が俺にもたれ掛かり、嗚咽と共に声になりきっていない鳴き声が時折聞こえる。
もう声だって枯れそうだ。
「…ごめん、離れるべきじゃなかった。……一人にして、ごめん」
しかし、確かに彼女は…ようやく、俺の事を掴んでくれたのだ。
黒い尾が消え、耳も尻尾も垂れてリラックスさせていくように。
「あったけぇ…」
呼吸が、合うまで。