第6章 スカビオサの予兆
「にしても、こいつもこうしてりゃ普通に女子高生なのになぁ…」
「なにそのおっさん臭い台詞〜」
「おっさん言うな。…いや、すぐ俺に遠慮して抱え込みがちだからよ、どうも」
「え〜?そりゃそうでしょ、とんでもない未来ばっかり見てるもんリアたん…それも恐らく、僕の百目の能力さえを悟って視たほとんど完全な未来をね」
ピクリと夏目の声に耳を傾ける。
すると、とりあえず場所変えよっか、なんてまたいつものようなノリに戻って手招きされるので、大人しくリアを抱えて着いていくのだが。
「…いいの?リアたん連れてきて…寝起きとかだと悟っちゃうと思うけど」
「リアが悟るとどうなるってんだ?」
「自殺でもされるかもね」
やけに鋭い目。
そこまで言うか…そこまで言うほどの未来を視ているというのか。
あれだろう?
組合との抗争で俺が怪我するだとか、そういった話。
リアは特別俺にそういう部分で敏感だし、そのためにならば何の躊躇もせずになんでも実行すると言っても過言ではない。
現にあの首領にさえ逆らった程だ。
「言っておくけど、組織の抗争ごときにおさまるようなものじゃあリアたんはそこまで動じないよ…自分が護れるように意地でも動くだろうからね」
俺の考えなんざお見通しってか。
「……起きるのが心配なら、一度部屋に寝かせてあげなよ。少し可哀想だけど、暫く魘されててくれるだろうから」
「そうまでして俺が手前の話を聞く価値は?」
「未来が少しでも変わるならと思ってね?」
「…」
言われるようにリアを部屋まで運び、初めて手元から手放した。
夏目だって悪い奴じゃないし、リアを大切に思っているからこその行動なのだろう。
それに、リアと通ずる能力を手にしているこいつならば同じような立場にいるようなものなのだから。
人に聞かれてはまずい話だということで夏目の部屋で話すことになるのだが、やけに雰囲気が思い。
「事態が事態だし、細かいところは色々と不確定な未来だから、単刀直入に結論から言っていい?」
「話が早くて助かる。続けてくれ」
それじゃあ、遠慮なく。
言った割に、口を開くのがやけに重そうな。
あんな性格の夏目が、どうしてここまで思い詰めているのか。
それこそが、事態の深刻さを俺に伝えてくれる。
「これだけは確定してるから言うけどね」
____近い将来、君…死ぬよ