第2章 桜の前
~ポートマフィア 拠点~
「首領!!!あの新入りはなんなんですか一体!!」
「ふふ、可愛い子だろう?春には高校生…だというのにあの童顔はなかなかクるものが」
なんの話しをしているんだこの人は。
いや、いつものことか。
「そういう問題じゃないでしょうそういう問題じゃ。なんであんな生意気な小娘…しかもよりによって俺の部下に?姐さんとかの方がまだマシでしょうに」
「いやまあ、彼女にも色々とあるからねぇ。その事情を考慮した上での判断なんだけど…ほら、中也君強いし?熱いし男前だし部下思いだし」
「持ち上げすぎです。それに、それならもう少し適任がいるでしょうに。第一どこから拾ってきたんですかあんなの」
「拾ってきたの君じゃないの」
「ああ、忘れてました。そういえばそうでしたね、俺にぶつかって喧嘩売ってきやがったんでした」
初めてあいつを見た…否、文字通り拾った時。
一瞬でも綺麗な奴だなんて騙された俺が馬鹿だった。
あいつは突然空から、意識のない状態で降ってきやがったのだ。
それを受け止めたのが、たまたまそこに居合わせた俺。
そしてどうするわけにもいかず、任務中だったこともあってとりあえず首領に診てもらうことに落ち着いて…任務から戻った時には、目を覚ましたそいつが俺の部下になっていた。
「ぶつかる前にうまいこと受け止めてたくせに。そんなに悪い子じゃないと思うんだけどなぁ…」
「俺以外にはでしょうそれは」
「……ふむ、上司がここまで信用しないとあっては少し問題だ。…それじゃあ中也君、あの子の元までお使い頼んでもいい?」
一体今度はなんなんだ。
嫌な予感がする。
そんな中、首領は直ぐにその答えを…見せてくれた。
「これ、届けてきて」
「これ…って、…?…シークレットサービス、契約書??」
依頼主の欄には、目の前の首領こと森鴎外の名前。
指名したそのシークレットサービスとやらの名前に、あの女の名前。
そして、その対象者…中原中也。
「…ええ、と…首領?…何故、俺が?」
「だって折角の部下なのに、そんなに反抗されて困るんでしょう?それなら権力を使うしかないって」
いいように使ってやれる、そう思った。
しかし首領は、俺に酷く優しい目線を送っていた。
「とりあえず、頼んだからね。住所も教えるし」
「…デカい顔してやりますよ」