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glorious time

第6章 スカビオサの予兆


は、?と、ようやく聞こえた声は、動揺というよりは処理が追いついていないというような声。
部屋着という名の白シャツ一枚と下着を身にまとった状態でドアから出ると、ばったり…そこにタイミングよく残夏君と連勝が居合わせる。

「おや、グッドタイミーンッ☆お疲れ様リアたん!調子はどうぉ??」

「…なんか格好エロくね??」

『へえ、連勝にはそう見えるんだ、不思議ね。リアの彼氏さんにとっては餓鬼らしいけど…という訳だから今日泊めて』

ピシッと固まる連勝と中也さん。
そしてにまにまと表情を崩さない残夏君。

「俺は別に構わないけどさぁ…リアちゃんの彼氏さんが怖いんですけど?」

『いいのよ別に、そんなの気にしないで』

「ふぅん。まあでも、俺が寝かしつけるってんなら毎度の如くくっつかにゃなら「ちょっと待て、リア、お前なんでそんなにムキになってんだよ」ほら、やっぱりやめとけって」

『…中原さんのお手伝い出来ないんなら、リアがいる意味無いじゃない』

「え…、は?…いや、お前何をそんなに気にして………って、おい!?」

ポツリとこだました声。
そしてそのまま、部屋を出て行ってエレベーターで展望デッキに登る。

見晴らしもいい…電気を付けないようにするのが、落ち着く。
いない存在になってしまった方が、よっぽど楽だなんて何度思ったことだろう。

いつもそうだ。

誰にも認識されない無になれたら、こんなにぐるぐる頭を巡らせずに済むはずなのに。

押し殺そうとすればするほど、尾が増える。

だって、何をって…決まってるじゃない。
少しでも貴方の役に立ちたいんだもの。

自分の、底知れぬ承認欲求のために。

だから私はダメなんだ。

「リ、ア…?…なんでこんな所で完全変化してるんだ?お前がそんなにメンタルやられるなんて……」

話しかけてきたのは、渡狸。
彼は恐らく修行…という名の走り込みトレーニングか何かの後だったのだろう。

お風呂上がりにここに来るのが習慣化しているから。

『……もふもふさせて』

ベンチから、立っている彼を見上げて言う。
すると、初めの頃は反発しがちだったはずの彼も、黙って変化してくれる。

豆狸になった渡狸は小さいのにあたたかくて、ふわふわしてて…だけどしっかり者だから、頼りになる。

胸元に抱きしめて、そのままベンチに倒れて彼と言葉を交わすのだ。
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