第5章 蛋白石の下準備
『…飼わない?ほんとう?』
「飼わない」
『リアのことも飼わないの?』
「……飼われてんの俺じゃなかったっけ?」
疑うように何度も聞かれる。
意外にも…というかまあ分かっていたことではあるのだが、リアの泣き落としは俺によく効くらしい。
『嫌。リアが飼われるの』
「どうしたよ、なんでそんな落ち込んでんだ今度は」
『だ、って…り、あ…中原さん、しか……じゃなく、て…っ』
何か、言いかけてやめてしまった。
こういうのは、大抵こいつの強がりで…大抵、こいつの本音が隠れてる。
「…俺しか、何?」
『……なんでも、ないです』
「寂しがらせちまったんだろう」
分かりやすくびくついて、声を出さなくなってしまう。
なんとなくだが、理解してやれなくもない。
今となっては本当に俺が頼りなのだろう。
本当に、他にも許せていない何かが、俺には見せられてしまうのだろう。
「はい、とりあえず深呼吸。呼吸乱れてきてるから…大丈夫、俺はリアのもんだよ」
『っ、…り、あは…?……リア、は…中原さんのじゃ、ないの…?』
弱ったな、どう言うべきなんだろうか。
自分のものだと言ってしまいたいが、そのまま伝えてしまうと少し自分の思っているニュアンスと異なってしまうような気がする。
「…なるだけ自由にはさせてやりてぇよ」
どこか、目を伏せてしまう彼女はわかりやすい。
そうなるだろうと思ったから、言葉選びを躊躇する。
「けど、俺のもんだとも思ってるし…なんて言うんだろうな、頑張って俺も抑えてんの、いっつも」
『……抑えなくていい』
「…だって俺、お前の事…一回本気で泣かせちまったからよ」
首領の命令に、従った。
そうしなければ、下手すればリアを護れなくなってしまうような気がしたんだ。
「それに、無理に焦らなくていい。俺がただの男になっちまったらお前……辛いだろ」
そこから先に進むのを踏みとどまれる範疇でなら、いくらでも俺はお前を束縛してやれるししたいとも思う。
…だが、それ以上になって、もしも何かの拍子にタガが外れてしまえば。
今度こそ、取り返しがつかなくなってしまったら。
そんな中、リアが動き始めた。
俺の着ている浴衣を少しはだけさせ、口付けて……膨らみがあるわけでもない胸の突起を口に含んで、舐め始めた。
「、…おい、なんのつも……っ、…リア、?」