第5章 蛋白石の下準備
それからというもの、まんまと完食するまでご飯、それにスイーツまでもを食べさせられることとなる。
流石に講義の結果口移しはやめてくれるようになったけれど、それでもなれない行為は恥ずかしいものだ。
そして問題は今…布団の中。
「お前敷布団でも寝れる?」
『ば、馬鹿にしないでください』
「よし。布団の数は?今なら選ばせてやるけど」
『…え、選んで?』
「…なら、こっち来い」
そうか、と特に驚かれることも無く迎え入れられてしまい、いつものように彼の腕の中に…入ったはいい。
ご飯を食べて、温泉まで入らせていただき、髪を乾かしてもらってからのこれ…流れ的に、するならそろそろなはず……では、なかろうか。
『な、かはらさん…?』
「あ?中原さん言うな」
『ち、ちち中也さん、その…』
「…まあいい、なんだよ」
不服だろう、知ってる。
しかし今はあまりにも事が事なだけに、呼び捨てする気になんかなれない。
『そ、その…き、今日……』
「ん?…まだ何か食いたいって?」
『そんなこと言ってないでしょ!?どんだけ私の事食い意地張ってると思ってるんですか!!!』
思わず突っ込む始末。
ああもう、考え込んでる私が馬鹿みたいじゃないか。
その気は無いの?無いのね?
オーケー、そういうことなら不貞寝してやるわよドンと来い。
『………美味しかった、です』
「!そうか?…なら、いいや。このクラスの部屋のコースなら準幹部以上が対象になってるから、また来たくなったらいつでも言え。お前のカードでも入れるし」
『…い、色気より食い気って思ってますか?…私の事』
「…どういうことだよ。何か悩んでるのか?」
あまりにも彼が自然だから、分からない。
だって、彼は…年頃の男の人であるし。
私も嫌いなわけではないし、ああいった触れ合いをしたっておかしくない。
わざわざ二人っきりでホテルに来てるのに。
『い、いやその………お、男の人、と二人でこんなとこ泊まる、って…………そ、そういうこと、かなって…』
電気が消されていたから、何とか言えた。
やらしい子だと、思われるだろうか。
私を撫でていた手がぴた、と止まってから…しかしまた、撫で始める。
「なんだ、それ気にしてたのかよ?それで緊張してたのか?……合意もなしにしねえよ、約束したろ」
『勝負、負けちゃったから…』