第5章 蛋白石の下準備
『も、いい…』
「ん?まだいけるだろ…ほら、お前好きじゃんこれ」
交わされる口付け。
滑り込んでくる彼の舌…それが熱く蠢いて、私の舌と絡められる。
そして私の口の中に残して、また彼は私の口内からそれを抜いていってしまうのだ。
『…ッ、…お、お米は自分で食べれます』
「好きだろ?いっぱい食わせてやるからな」
『自分で食べさせてッ!!』
何故だ、どうしてこうなった。
言いぶりからしてみて、そういうことをするホテルに連れ込まれるような流れだったのに。
なんで普通に豪華な旅館に連れてこられてんの。
なんで普通に美味しいご飯フルコースで食べさせられてんの。
「やだよ、お前不戦敗者じゃん」
『なんで私がもてなされてるんですか!!』
「敗者に選択権はねぇよ?お嬢様」
尻尾を振る気力もない、こんなの反則にも程がある。
力入んなくさせられて動けないのに。
『…、こ、し…抜けた』
「知ってる。可愛い」
『………そ、いうこと言うの…ダメ』
「なんで?恥ずかしいって理由なら却下」
言い返す言葉が見つからなくてふえぇ、と半泣きになる。
なんか今日強いこの人、なんなのもう、どんだけ私ばっかなのほんと。
『な、中原さん変態…っ』
「はいはい、こんな変態選んじまった自分の事恨みな?まあ逃がさねぇけど」
『なんで恨むのよ馬鹿ぁ、!!』
「んん?じゃあ喜んでくれんの?」
自分で変態だなんだと罵った手前、素直に頷きたくなくてうぐ、と声をこもらせる。
しかしそうしていると私の顔を覗き込むようにして手が頬に添えられ、挙句髪を耳にかけられてしまえばもう顔なんて隠せない。
『よ、喜んでなんかな「嘘ついたらこの先リアから強請られなきゃキスしてやらねぇけど」!!?は、はぁ!?なんでそんな酷…っっ!!』
にぃ、としてやったり顔でその人は私の反応を伺っている。
『………、き、嫌いじゃない、ですけど』
「へえ、好きでもないんだ?そりゃ残念…悲しいなぁ、俺はこんなに嬉しいのに」
『!?す、好きよ!?中原さんいっぱい大好き、リアいっぱいいっぱい大好きだから!!!』
「お前ほんっと純粋だよな」
よーしよーしと撫でられ始める。
あれ、もしかしてこれいいように踊らされてる?
…まあいいや、撫でられるの好きだし。
尻尾が無意識にパタパタと振れれば、また彼もキスしてくれた。