第5章 蛋白石の下準備
照れ始める彼にこっちまで恥ずかしくなってきた。
『…つ、まりその…?』
「皆まで言えってのかよ!!?」
『だ、だって…思ってたより凜々蝶ちゃんばっかり気にかけてるから、今そういう気分なのかなって…』
しどろもどろ、尻尾を生やして体を隠しながらからだをもじもじと無意識にくねらせ、何となく髪を指でいじって熱くなるのをやり過ごしてみる。
拍子抜けだ、いきなりそんなに素直になられるなんて。
「ぼ、僕が気にかけられていたのか!?白縹さん、中原さんは君の口にする予定の魚の身を解しているのにか!!?」
『い、いいいいや、だって凜々蝶ちゃん可愛い、し…そ、そういう清純そうな子がやっぱりいいのかなって思っちゃ………、は!?魚の身!!?自分で出来るっつってんでしょ、ていうか何してんのよ凜々蝶ちゃんのこと見ながら!?変態!!』
「理不尽すぎんだろ、どこに変態要素があったんだよ!!!つか何が清純そうな奴がだ、手前だよ手前!!妬いて拗ねてたくせして恥ずかしがってそこから出てこねぇ純粋な馬鹿可愛がってんだよこちとら、満足かあぁぁあ!!!?」
キレ気味に言ってのけられた。
ああダメ、なんか意地張ってるのが持たなくなりそう。
…あれ、私なんで意地張ってるんだろ。
『ま、…っ…ほ、他の女の子ばっか見るような阿呆はお呼びでないのよ!!』
「じゃあお前の事ばっか見てて耐えられんのかよお前は!?俺は別にそれでもいいんだからな、よォし言ったな!?命令しやがれお嬢様よォ!!」
『………、ぃ、…』
声が小さすぎて、あ?と、興奮気味になった彼が一度冷静になるようにして聞き返す。
それに、少しだけ尻尾と尻尾の間に隙間を作って、顔をちらりと覗かせながら言う。
『ご、めんなさ…ぃ、………い、ぃ…いわ、なきゃ…してくれな、い…です、か…ッ?』
「羞恥プレイか?んん??」
「蜻蛉様、茶々を入れないでください。今せっかくリアが可愛らしいシャッターチャンスを作ってくれているんです」
ぽかんと目を丸くさせてから、椅子から立ち上がった彼はこちらに歩いてくる。
それに合わせて後ずさればすぐに他のテーブルにぶつかって、カクンと膝の力が抜けてへたりこんだ。
『…ご、めんって…ば……、…怒鳴んない、で…くださ、ぃ…よ』
「………お前可愛いな?」
『へ、…っ、う、?』
「んじゃ、デートしようか」