第5章 蛋白石の下準備
「ちなみに、中也殿からはどのように告白されたんだ?お前が了承するような性格の持ち主には見えなかったのだが」
『…なよっちかったから、宣言させたの。今から俺の女だからって』
「……成程。覚えておく」
覚えておいてどうするつもりなんだか。
「小っ恥ずかしい話すんじゃねえよ…つか、今ならもっと話せるぜ?お前のこと」
髪に触れる彼の手。
ああ、そう、こんなにも私はこの手が好____
その刹那、見えたものは…感じ取ったものは、とても言葉では表現出来ないもの。
私が何かに、発狂するように、ただただ叫んで、それから真っ暗闇に沈んでいる。
目の前からぽつりぽつりと、どんどん光が消えていく。
そして、一つ、私の目の前で“それ”は飛んでいった。
私は彼の紅色に染められた____
「リア…おい、また上の空か?…リア、」
『!!!?、…は、?…う、上の空とかそんな事ないし』
「?…どうした、酷い汗だぞ」
『……なんでも、ない』
どれ程遠いのか、それとも近いのかさえ分からない。
けれど確かに感じ取ったもの。
悟りの力で視えてしまった光景…それを変えたり、少し違った結果にすることならば可能である。
彼の大好きなその手に…柔らかく手を添えて、離させた。
『…ごめんなさい、事情が変わった。中也さん、私と金輪際関わらないようにして』
「む?」
「…どうしたんだよ突然。金輪際って、まだ関わり始めてそんなに経ってすらないのに」
『事情が変わったの。申し訳ないけど…冗談じゃ、ない』
私が視たそれは、前世までの何人もの私が経験してこなかった事態だ。
詳しいことはわからないし、あまり読むべきものでもないというのは事実である。
けれど、これだけは確かに感じ取った…“未来の自分の感情”を、未来の情景の彼から読み取って、ちゃんとハッキリさせた。
「おいおい、冗談じゃねえってそんな…せめてもう少し理由を『私のためよ』………そう言われると、何も返せなくなっちまうんだけど」
私のために、お願いだから関わらないようにしてください。
お願いだから…私のために、これから先私に尽くさないでください。
じゃないと、貴方は…
「リア?理由があるなら言えばよかろう」
『…理由?まだ言うの?』
「私も納得出来んぞ、それでは」
『そ…私が死にたくなる程後悔する未来が視えたからよ』