第5章 蛋白石の下準備
一度妖館に戻って昼間になれば、言っていた通り、またカゲ様と一緒に中華を食べる。
まあ、今回の彼の帰省の目的なら私にはお見通しなので、この食事の目的までもだいたい想像は着くのだが。
中華を食べて、今度はカゲ様の行きたいところに振り回される…ことはなく、珍しく私の言うところへとついて回って、途中から先導し始めたほど。
そうして大量にまた溜まっていく、自室用のお菓子。
『……カゲ様、いい加減甘やかしが過ぎるんですけど』
「甘やかしてなどいない、いつも通りだろう!ふはははは!」
____指輪か…まさか、リアまでその気になっているものとは。流石にこれではても出せまい。
潔い声が聴こえてくる。
何会っただけで失恋察してるんだか…今までそうには見えていなかったってこと?
さすが、私の事よく分かってるだけあるわこの人も。
『私もう高校生なのよね。カゲ様と違って自分で稼ぎもあるし』
「稼がずとも永久に私が貴様に不自由はさせな『そういうのいいんで』押し売り拒否、S!!」
うじうじすんな、とでも言ってやりたいくらい。
しかし彼がそこまで私に気付かれていると知れば、余計に傷付けてしまうだろう。
どこの誰だ、略奪愛か悦いぞとか言ってた奴は。
まあ、彼なりの気遣いや虚勢だということくらいは分かってはいるが。
「なんつうか、お前青鬼院にはドライだよな。本人いなけりゃあんなに好いてんのに」
『こんな変態に愛嬌向けたところで調子に乗ってもっと変質的になるだけだもの』
「でも嫌いじゃないんだろ?」
『嫌いよ』
面食らったような顔をする中也。
カゲ様本人にしたらいつものことなので何も特にリアクションはない。
『だってその人、私の事ほったらかすのが好きだし?しかも他の人にだって平気で甘やかすし、無駄に優しいし度量広いし』
「それ褒めてね?」
『そのくせなよっちいから男らしくないのよ…頼りないとまでは言わないけど、それならその気にさせるようなことをするのは無責任だと思うのよね』
「放置プレイというものだ。可愛いぞ?リア」
『こういう所が大っ嫌い』
「…」
全てを察したと言わんばかりの目線をカゲ様に送り付ける中也。
私が中也と“交際”しようと決意したのはそこにある。
『略奪愛…成し遂げるくらいにその気にさせて攫ってっちゃう人がいいもの、私』