第5章 蛋白石の下準備
『中也さん中也さん、次クレープ食べたい』
「はいよ」
あっちに行ったり、
『次タピオカ!』
「はいはいー」
こっちに行ったり。
屋台物だとこういう食べ方が出来るから楽しいものだ。
『中也にもあげる』
「俺にもって、さっきから俺半分くらい食わされてねえか?」
『………リアのじゃいらなかっ「めっちゃ嬉しいわ、え?次タピオカくれんの??リアからくれるなんて幸せもんだわ俺」!!うん、あげる!!』
流石は中也、そのちょろさもそろそろ筋金入りになりそうね。
何やかんやで外に出ればデートになる。
というのも私のわがままで、彼を付き合わせているのだが。
『…中也さん可愛い』
「それ褒められてる気しねえんだけど?…他にねえのかよ」
『?中也さん優しい…から、好き?』
「お前また無意識に…」
無意識に…そういうことを?
あれ、あ、もしかして伝わってない?
もしかしなくても、伝わってない??
私があんなにも苦しんでいた理由でさえ理解していない…??
『…私中也さんのこと好きなんですけど』
「え?知ってますけど」
『……ほんとに?』
「だってお前こんなに甘えにくんの俺にくらいじゃねえの」
ああああ分かってない。
何、どう言ったら分かるわけ??
なんて言ったら伝わるの?好きじゃないの?好きなんだから好きでいいじゃない私に何回言わせれば気が済むのこと人。
『そういうんじゃないのに…』
「ああ?どうしたよ…なんか企んでるとか?」
『…さいてー、控えめに言って消し飛んで』
「控えめってどういう意味か知ってるかクソ餓鬼??」
私がこんなに中也に向かって好き好き言うことなんて、普段無いはずで…
そこでふと思い出す、寝る時の普段の会話。
…毎日結構言ってんなぁ。
『……だ、から…す、き…』
「聞こえてるって。…俺の耳に難癖つけてんのか?」
思いっきり鳩尾を殴って動けないようにさせてしまった。
膝をつく彼を放置して、ズンズンとショッピングモールに入る。
口で伝わらないなら物だ、丁度彼の誕生祝いに悩んでいたことだし、それっぽいものを見繕ってしまおう。
何がいいか…私が買えそうな範囲で伝わるもの。
思い出したのは、結婚指輪。
…いや、それじゃさすがに早すぎる、私どっちかっていうとされたい方だし。
『…、?なにこれ』