第5章 蛋白石の下準備
あまりにも一気に話しすぎちゃったからと、今日は離れておくと…マーク君は私を連れて行くことなく去っていった。
「……リア、お前…」
『…分かんない、かも。…どうしよ、私』
罪悪感では動くなと言われた…筋の通っているはずのその理由を使うのはやめてくれと。
他ならぬ彼自身からのお願いだ、聞かないわけにいかない。
けれど、どうしたらいいのか分からなくなるばっかりだ。
「…事情は大体察したよ。しかしリアちゃん、あの人言ってたけど…要するに、どうするべきかじゃなくて、“君がどうしたいのか”で選んで欲しいってことだったんじゃないの?」
『………どうしたいって、そんなの…償いたい以外に、思いつかないのにどうしろってんですか、?』
「……彼は君の良き理解者らしいねぇ、本当に。…ゆっくりでもいいんじゃない?そもそも、君のパートナーの人を見極めて安心できそうなら帰るって言ってたんだしさぁ」
それに、アメリカに帰ったからと言ってこれから先も死ぬまで独りなわけじゃあないでしょう?
太宰さんの言葉は最もで、少しだけ…ほんの少しだけ、息をするのが楽になった。
…けれど、それで本当に中也が狙われたら?
そしてそれで万が一…億が一、彼を失ってしまったら?
私は、どうしたらいい?
誰に引っ張ってもらったらいい?
誰に決めてもらったらいい?
どうやって生きていったらいい?
先祖返りというシステムさえなければ、私だって貴方と同様に死ねるのに…私はそれが許されない。
それどころか、悟りの血のせいで記憶まで全て受け継がれてしまう。
私、貴方がいない世界でどうやって生きていけば…
あれ、でもそれって、例え貴方が他人から殺されようと…その天命をまっとうしようと、変わらないのかしら。
…それなら、私は結局、どう足掻いても来世でまた独りぼっちで……あれ、わかんなくなってきた。
それじゃあ、今こんな風に一緒に過ごしてる意味って何?
この人は、先祖返りじゃあないのに。
私はどの道この人を失った道を、歩んでいかなければならないのに。
『そ、んな……嘘、なんで今更そんなことに気付…っ、……』
ばっかみたい、
溢れた言葉と共に、プツリと糸が切れた。
どこかで求めていた声が私を読んでいる気がするけれど…疲れた。
疲れたの、もう。
私とこれ以上関わらないで…これ以上私の事、寂しくさせないで