第5章 蛋白石の下準備
急すぎる事態に困惑する。
あれ、嘘、そんなわけ…いや、確かにあの家の人達とは面識も何度かあるけれど。
暖かい家庭でも、あるけれど。
「ちょ、まて手前…そんな話するために、わざわざこいつに接触しに来たのかよ」
「わざわざも何も、ずっと探してたんだよ?思わぬ生存の確認が取れてしまったのが、まさかポートマフィアにタイガーボーイの件で伺った部下からの情報になるだなんて思わなかったけど」
『…私の事、探して?』
「当たり前でしょ?」
そんな話だなんて聞いてない…そんな、私が求めてしまうような話だなんて。
____やっと会えた…やっと見つかった。長かったなぁここまで。
読み取れるのは、彼の本心。
相当に探してくれていた。
しかし私はその先に聴くべきでなかったことを聴きとってしまう。
…まあ、このままこっちに来そうならちゃんと説明しないとだけど…受け入れ体制が整っている状態まで来てるところで、今生き残ってるのが僕だけだってこと____
『……、う、そ…?…え、ま…っ』
両手で口元を抑えて、その真実を口から零さないようにする。
「…どうしたの」
『い、や…あの、……』
「……何か読んじゃった?いいよ、どの道決定したら話そうと思っていたことだ」
『…お、父さん…達、亡くなったって……』
そうだね、と彼は言う。
家族という魅力的すぎる話は、確かに私を釣るためのものだったのかもしれない。
しかし、今回の彼の目的はそこではないということが、たった今判明してしまった。
『………、…わた、しのこと…探してたせい、って』
「…あんまり自分のせいにしないの。リアは何もしてないでしょ?」
違う、私をそうしたかったのは確かに彼の意思だったのだろうけれど、それだけじゃない。
彼は今、独りなんだ…独りにさせてしまったんだ。
私が…私の本家の人間が。
世間から消し去ったそれを知る人物を野放しにしておくには、婚約相手の家族にもなると箔がつかなくなってしまう。
あまりに都合が悪すぎた…そしてそれで縁が切れれば良かったものを、私の存在を掴もうとまで動いていた。
その結果が、それ。
「あーもう、だから話したくなかったのに…いいかい、僕はそれに引け目を感じてアメリカに飛ぶなんて考えならいらないからね?そんな事をお願いするほど子供じゃないよ」
…なんて、強い人。