第5章 蛋白石の下準備
やけに疲れた。
いや、現在進行形にするべきなのだが…やだもう、いい大人が二人して何に張り合ってんのこの人たち。
げんなりしてビルの外に二人を連れ出す。
ご迷惑おかけしましたと言えば、お邪魔しましたー!!と盛大に元気なご挨拶をしてくれたマーク君。
いい人…なんだけどなぁ…??
外で待機していた私の恋人様までもが何故かイライラした様子で私を待って…あれ、待ってなんでここにいるのこの人、私この二人撒いてから合流しようとしてたのに。
「!!やっと出てきた…おいリア、なんださっきの変態スピーチ。なんださっきのヘリ……そいつ何、誰、殺して良い奴か」
『落ち着いて中也さん、この人は「あっ、もしかして君がリアの恋人?」…はぁ、』
「あ?…だったらどうした」
「………ちっちゃ〜」
「手前喧嘩売ってんのか」
手が出そうになるのをどうどう、と抑えにかかる。
一言目で失礼すぎる煽り方をしているようには伺えるが、その実彼には悪気というものがない。
思ったままのことを述べているだけで、失礼なことだとさえ思ってはいないのだ、本当に。
『お願い中也さん耐えて、こういう人なのお願い、悪気はないの私が代わりにごめんなさいするから本当に許してあげて一生のお願い』
「えっ、なんでリアちゃんが謝ってんの?」
『あんたはもう少しデリカシーってもん覚えなさいよいい加減…今年二十二にな………、えっ、中也さんと太宰さんと同い年!!?』
「嘘だろ」
「嘘でしょ」
「えっ、僕と君達同い年なの?よろしく〜」
あの太宰さんまでもが引くレベル。
マジかこの人、マジでなのか。
驚愕が過ぎてモノローグでさえ口が悪くなってきた、気を付けねば。
「いやね?いきなり僕の方に亡くなったって知らせが来たのに葬儀に呼ばれないし、どう考えても筋通らないしおかしいなって…それで調べてたら戸籍消されて本家から追い出されてるって話じゃない?だから、それならうちに嫁いでもらえばいいじゃないって」
『、!え…う、嘘、そんな話……まっ、て…それ、』
つまり、と私が言葉にしようとしたのを、代弁するように彼は微笑んで言う。
眩しいくらいの笑顔で…純粋な気持ちで、私に伝える。
「うん、うちにおいでよリア。…父さんも兄さん達も、皆納得してるんだ」
『……かぞ、くって…事、?…私に?』
「だから、結婚しようって」