第5章 蛋白石の下準備
「目がくりっとしていて、細身で華奢で…抱き心地のいい子が好き」
『胸の大きさは?』
「私が育てるから正直どうでもいいけど、リアちゃんくらいかなぁ」
『……全然ドキドキしない、なんでだろ』
「ちょっと、私ここまで言わされたのだけど??」
さながら変態のようじゃないか、探偵社の皆なんて引き始めてるよ?
なんてぶすくれられる。
やはり素直な人だ…まあ私相手だろうからかもしれないが。
『しかも中也さんと同じこと言ってるし…でも不整脈はないのね』
「不整脈?…リアちゃん、それ何、どういうこと?」
『……中也さんのタイプの女の人の話聞いてて、なんかね…なんか、自分の見た目とか気にしたこと無かったのに変に気になっちゃって』
「さ、さながら恋する乙女みたいだね?その、中也さん?に…」
『え____』
言葉を失った。
そりゃあこうなるだろう、だって知らなかったことを事実として唐突に突きつけられてしまったのだから。
それも、話を聞いただけの…中也さんと私のことをよく知らない谷崎さんに。
続けて与謝野さんが言う。
「え、って…あんたもしかして無自覚かい。それ、どう考えてもその男のこと意識してるだけだろう」
ちなみに、その相手こそどういう関係なんだと問われれば、作戦などは関係なしにただの個人の質問であったために素直に事情を説明した。
『え、っと…一応、恋人……さん』
「…好きって自覚も無かったのにかい?」
『……恋愛感情、分かんなくて。…そういう意味じゃなければ好きだったけど、やっぱり私分かんないから……って話してたら、絶対に惚れさせるからって』
「おお、中々男気ある奴じゃないか……で、まんまと惚れさせられてるのに気付きもしませんでしたって顔してるけど?」
自分の顔がどうなっているのか、分からない。
あれ、変なの…その一言が分かっただけで全部辻褄が合っちゃうの。
全部全部、納得がいっちゃうの。
…いつから?
どのタイミング?どうして??
『あ、あんな脳筋で喧嘩っ早くて煽られやすくていじりがいあって、そのくせかっこいいし何かあったら助けに来るし過保護だし愛情表現欠かさないしベタベタに甘やかすし仲間想いで部下想いな人なんか…』
「「「「ベタ惚れじゃないか」」」」
『へあ、!?そ、そうなの!!!?』
太宰さんから、溜息が聞こえたような気がした。
