第5章 蛋白石の下準備
初体験の相手が何人だったか…そこまで正確なことは覚えてはいない。
いや、初体験ということは私のその証明とも言えてしまう膜を破ってしまった人こそそれに該当する人物なのだろうけれど、集団により行われたそれはひとつの行為とみなしてしまうのが私の方からの心境で…みんながみんな、同じだった。
同じ、男という存在。
今回こそは気を付けようって、そう思っていたのにまたこうなって。
小学生やそこらの小さな子供の頭じゃ、まともに処理することなんかできなかった。
喪失感…そしてあとは、恐怖とただの痛みだけ。
そんなところに、今回は現れた人がいた。
それも、なんとそんな私を見て…それから助けてしまおうとする変わった人が。
しかしその人が私の事情を理解すると共に、私にとある感情が芽生えたのだ。
そんなに私を救いたいのであれば、善人面をするのなら、それを証明して見せてくれと。
自分が望んだら、こんな行為も少しは私を慰めてくれるものになるのではないかと。
勿論少年は困惑し、一瞬否定しそうになっていた。
しかし、彼は私に捕えられていた……見惚れていたのだ、私という存在に。
私はそれを、珍しいことに自分の為に利用した。
男は私をこんな風に利用するんだ、散々されてきた私がそれを望むのはいけないことなのかしら…と。
まあ、まさか自分から望んだそれに結果的にまた恐怖して……その結果こうなるように至るまで、散々に善くされてしまったということは流石の私にも予知できなかったわけなのだが。
とまあ、そんなわけで、彼は文字通り…私がただの雌になってしまう直前で、ちゃんと女の子にしてくれた人だった。
私の初体験とも言えるその日…上書きをしてくれたのだ。
だから、彼とはキスできる。
だから彼には抱き付ける。
だから…なんでも、許せる。
彼が私にそうであるから。
「…でも、こんな子が準幹部……ほ、本当に?」
「僕も最初そうには見えなかったけどね。その実、腕は確かだった…組合の構成員相手に、僕と敦君が足でまといだったくらいだから」
『……太宰さんてどんな子がタイプ?』
脈絡の無さすぎる質問にまた吹き出す探偵社諸君。
「何、突然…馬鹿にしてる?」
珍しく恥じらったように…少し嫌そうな反応をするその人。
『ううん、純粋に。対照実験に協力して』
「あのねぇ…、……私のタイプねえ?」