第5章 蛋白石の下準備
『無駄に事を大きくして死体を増やす必要は無いと…当然でしょう?死するべき人間の問題を、関係の無い人々まで巻き込んでいい道理なんて存在しない。……何より、マフィアの作戦は私が仕切っているような現状なんです、それを一方的に拒否される言われはありません』
「マフィアの、作戦って…!!き、貴様まさか…数ヶ月前にポートマフィアに入ったという、噂の参謀長か!?」
『えっ、なんですかそれリア知らない』
ガクッと崩れる一同に、太宰さんがその通りだよと口添えする。
『私はそもそも反対してたんですからね、七十億のために人虎の捕獲なんて。そんな契約保証される証拠も無かったし、そんな事せずに自力で稼いだ方が早いって言ったのに』
「おや、そうだったのかい?でも結局そこは反論しきらなかったんだ?」
『反対はしたけど、相手が武装探偵社なら太宰さんいたし?』
「ふうん、じゃあ今回あれだけ反抗したのは相当譲れないものがあったんだねえ?君が何かにそこまで執着するだなんて珍しいなあ」
『当たり前じゃないですか!!だいたいあんなロリコン趣味にお金費してるから金銭感覚おかしくなるんですよ!人の中也さん巻き込んで作戦進めるんなら私が納得いく形にしろって「君ほんと中也のこと好きだよねぇ?」当然でしょう!!?私の中也さんに何かしようものなら首領相手でも殺すわよ!!!』
興奮しきっているのをどうどう、と宥められる。
初対面の構成員さんまでもが私をあやし始める始末だ。
「く、苦労しているのだなそちら側も?」
『分かってくださいますか国木田さん…?いやまあ、確かに合理性に限っていえば…しかも組織のためって言うなら分かるんですけど……私の私情なのも確かなんですけど』
むにゅむにゅとつつかれる頬。
サラリと指を通される髪。
先程から私をまさに人形扱いし始めた太宰さん。
やけに楽しそうね。
「まあそういうわけだ。この子とは敵対するメリットもなければ、この個自身は我々に関してそこまで敵対意識もない。それどころかリアちゃん私の事大好きだものね?♡」
『うん、中也の次にね』
「敦くん、私の遺書書いといて?自殺してくる」
『太宰さん死ぬなら私も今すぐに死ぬけど?』
「…やめだやめ。分かった分かった、ありがとうね」
包帯の感触にももう慣れた。
貴方がいなければ、私は今頃…
「心中しない、のか…」