第4章 培われしは藍晶石の光輝
中也には野暮用が出来たから一人にしてくれと連絡して、納得してくれたのかは分からないけれど了解という返事を受け取った。
「小娘、何故俺が武装探偵社の国木田だと分かった」
『こないだ新聞に載ってたから』
「では、どうして太宰の奴が同僚だと?それにあいつは顔が割れていないはずだろう」
『私太宰さんの知り合いなので』
例の場所まで駆けながら、話を交わす。
「…何をされた?被害届を出すなら俺も協力するぞ」
加害者扱いが前提って…どれだけ人望が無いんだあの人。
ポートマフィア抜けて経歴洗ってまでなにやってんの本当に。
『被害届出すなら勤怠届け出した方が良くないです?あの人の場合…苦労してそう国木田さん』
「分かってくれるか」
苦労人だわこの人…見たことあるものこの感じ。
川が見えてきたところで、少し離れた位置で国木田さんには待機していてもらう。
川まで走っていけば、本当にその人はそこで川から上がって待ってくれていた。
そういうところは素直なのよねこの人。
『お待たせしまし、った…!』
「…走って来てくれたのかい?中也は、どうしたの?」
『用事があるから一人にしてってメールしてきた…、折角、だから』
心底嬉しそうにする太宰さん。
ああごめんなさい、けれど私にも良心というものがありまして。
私の手を取って立ち上がった太宰さんの手をぎゅ、と握れば、何故か彼の心拍が速くなる。
そのまま手を引いて、濡れて重たい服を身にまとった彼を……かの国木田独歩さんの元へと引き連れて行った。
「……リアちゃん、私に会いたかった理由を聞こうか?」
『太宰さんの奔放さに手を焼いてる人がいると、私ほっとけないみたいなの』
「やっと見つけたぞ太宰…、そこの娘の尽力がなければどうなっていたことか」
わなわなと怒りに震える国木田さん。
今日もお勤めご苦労様です、苦労は全てこの人のせいでしょうけれど。
『太宰さん逃げたらこのまま家まで引き連れて行って中也と一緒に監禁するからね?』
本気で嫌だったのだろう、一瞬で逃げる気配が消え失せた。
「私はこれから探偵社の職務を全うするべく真面目に生きようと思う」
『二年間探偵社で何してたんです?国木田さん、あまりにも酷かったら言ってくださいね?この人の弱点ならいくつか持ってますから』
「なんという娘だ…名を聞いても?」