第4章 培われしは藍晶石の光輝
食事を済ませてデザートまで堪能してから、店を後にする。
散々に甘やかされれば、私も感覚が麻痺してきたのか遂に恥ずかしいのを通り越し、開き直りきっていた。
『…歩きにくいー』
「じゃあおぶろうか?」
『顔見えないの嫌』
「それなら横抱きでもいいけど」
『今はやだ』
彼の腕に両腕で抱きつきながら歩く。
ギュッてしてるのが、案外私は好きだったらしい。
まあ元々カゲ様二号ことドミノマスク型巨大抱き枕なんかに抱きつく癖があったのも確かではあるが。
「…ったく、どこに行きおったあの唐変木」
そんな道行く中、はたと目に止まる男が一人。
長い髪を後ろでひとつに縛った、眼鏡のいかにも几帳面そうな…身長高めの男の人。
身長高めのだ。
他意しかないので二回繰り返した。
が、そこで強すぎる怒りを私は自然と読み取ってしまうこととなる。
____太宰の奴め、川か!?それともどこかで首吊りか飛び降りか!?どこだ今日の自殺先は…!!
『…』
苦労してるなぁ、今の同僚さん…。
哀れみがここまで募ると泣けてくるレベルだ。
まあこの男の人がまだ救われている点がどこかと言えば、半分からかわれているくらいで後はそもそもの太宰さんの性質に頭を悩ませているだけであるということ。
これの対象が中也になんかなったら、ただでさえこれなのが更に嫌がらせという形で芸術的なまでに披露されてしまう。
私でさえ何度か見かけたことがあるレベルだ、あれはシンプルに酷い。
携帯端末を取り出して、そのまま電話をかける。
相手は勿論、例の自殺嗜好の男だ。
身長高めのね。
「ハッローリアちゃん!!どうしたんだいこんな時間に!!」
この間の件で交換しておいた連絡先の使い道がこんなことになるだなんて、誰が予想できただろうか。
『…会いたいなぁって。…今どこ?』
「わ、私に…!?待ってね…今ね、川流れてるんだけど、丁度線路の走っている橋がかかっているよ!もうちょっとで川から上がるね!」
『あ、そのままいて?すぐ行くから』
じゃあね、と電話を切って、疑問を浮かべる中也から離れて眼鏡の男性に向かっていく。
『あの、すみません…武装探偵社の“国木田さん”ですよね?太宰さんの同僚の』
「ああ!!?それがどうした小娘!!!」
『いやあ、その…太宰さんさっき川流れてて……捕獲するなら早い方がいいかと』