第2章 桜の前
「お~い、リアちゃん??…出ておいで、それかお兄さん中に入らせて」
『…うっさい、関わんな』
「お口まぁた悪くなってるよ?君のシークレットサービス希望者さんが心ここに在らず状態で真っ白になってるし、話したげてよ」
『っ、そんな奴…死ねばいい…!!二度と私と口聞かせないで!!』
「じゃあ蜻蛉さんから電話来てたけど、リアちゃん出たくないってって伝えとくよ?」
『へ、……嘘。…電話…?……カゲ、様??』
外から聞こえた、珍しく大きな連勝の声。
嘘は言ってない…確かに本当のことらしい。
「本当。リアちゃんのカゲ様から」
『…私に?どうして??』
「またどっかにカメラ仕掛けられてたんでしょね。なんか心配してるっぽいけど?」
たまに、ある。
放浪癖のあるあの人は、すぐにこの街からいなくなる癖に、妙に私の行動や動向を把握し、観察しているのだ。
何故かは…聴かないようにしているけれど。
ブランケットを頭から被ったまま、ドアを開ける。
すると連勝から動揺したような声が上がった。
「あ~、と…ええ、リアちゃんその格好……風邪、ひかない?」
『…風邪くらいどうってことない』
「ううん、えっとね?…相手が俺だったからいいけど、ドア開ける時はちゃんとお洋服着てなさい?」
『?お布団被ってる』
「あ~~~…うん。まあいいか今は…じゃあ代わるからね。はい」
手渡されたのは、置いてきたはずの私用に買われた携帯だった。
あれ、どうしてだろう…私、まだ一人としか連絡先交換してなかったはずなのに。
なんで私の携帯に、カゲ様が…?
恐る恐る受け取って、慣れないながらにはい、と声を振り絞る。
「久しぶりだな、我が肉便器よ!!!元気にしているか??私は元気だ!!」
『!、…カゲさ、ま……ッ…』
声、久しぶりに聞いた。
久しぶりに感じた、その人のこと。
「うんうん、どうしたどうした。お前はすぐに一人で爆発できずに不完全燃焼する癖がある……新しいシークレットサービス、契約しないのか?」
『……あの人、やだ。私…カゲ様と一緒がいい』
「聞いてやりたいのは山々ではあるんだがな…知っているだろう、どういう所を訪ねて回っているのか。…お前は、殺されるぞ」
『もういい、それでもいいの。だからカゲさ「私はお前に死んで欲しくはないのだが?」…でも、』
「……近々帰ろう」