第4章 培われしは藍晶石の光輝
「都合のいい頭になったものだ…私が出なかったら、どうしていたつもりだ」
ゆっくりと私を降ろして、問う。
『…どうするも何も、いつも通り。その場の流れに身を任せるだけよ』
言うが早いか、パン、と軽く頬を叩かれた。
…久しぶりなのに。
こんな再会なら、いらなかった…ない方がよっぽど、マシだった。
『……っ、嫌いなら、助けないで!!…何年も、何年もずっと知らん顔だったくせして今更保護者面しないでよッ…、なんで、…なんで…っ』
なんで、私のこと置いてっちゃったの?
なんで連れて行ってくれなかったの?
私…誰に助けに来て欲しかったの??
誰にご飯、食べて欲しかったの?
分からなくなってる、全部。
もう、やだ…だから嫌いなのよ男の人って。
こうやって私のこと分からなくさせてきて、そのくせいい顔ばっかりして。
「私がいつ、お前にそんなことを口走った?一度でも言ったか、そんなこと」
『だったらなんで私のこと一人にしたのよ…っ、なんでこういう時だけ心配したようなそぶり見せんのよ…!中途半端に優しくすんなって言って__』
「リア!!!!っ、やっと見つけた…誰だそのいかにも怪しい格好してる変態は!!?下がってろ、すぐに俺が「ほう、これが中原中也だな?その溢れんばかりのMっぷり、悦いぞ悦いぞ!!」!!?何言ってんだこの…、?」
瞬時に理解したのだろうか。
その独特の口振りに、既視感を見出したのだろう。
「……リア、もしかしてお前、この男と知り合いか?」
『はぁ!?知り合いですって!!?なんで私がこんな…人の事四年も置き去りにしといた挙句にのうのうと過ごしてのこのこ帰ってきて保護者面するような男なんか死ねばいいのよ!!!』
「ぐっ、その言動中々のドS!!!!…だがリア、ひとつ訂正しよう。貴様がまだ学生なのに、連れ回す訳にはいかんだろう?」
分別は弁えている。
それがこの人。
言動はこれだけれど、実質一番物事を冷静に把握し、行動に移す人だ。
よく知ってる。
「…ま、まさかお前…カゲ様って…?」
ここでようやく気が付いたらしい。
まあ、初見にしては勘のいい方か。
『……何しに来たの』
中也に向けて放った言葉に、彼はぐ、と押し黙る。
『私は…一人になるためにああ言ったのよ。双熾から何も聞かなかったの?……襲われるのも覚悟の内で外に出たの』