第4章 培われしは藍晶石の光輝
お風呂から上がって、それから。
髪を乾かしてくれる彼に会いたくなくて、外に出た。
大丈夫だ、私のことをストーキングしている人物は二人いるし。
私に何かあった時にどちらもここに来なかったらそれまでだ、それでいい…それに私は弱くはない。
ついでにケーキに入れる刺激物を買い漁っていこう。
それから、ちゃんと普通のデザート用の材料と、いっぱい疲れてきただろうから体にいいものと…後は、どうしよう。
スーパーで一通り買って、食材以外で彼の好きなものを考える。
何か、しなきゃって…何かしないと、忘れられちゃうって。
私、こんなに空っぽなのにって。
不安が拭えない、そんな時。
ガッ、と肩を掴まれて、振り向かされる。
「か〜いい子がこんな時間に何してんの〜??一人でさぁ」
酔いのまわった、男の人。
スーツを着ているが、読み取れる感じでは新卒だ。
歓迎会か何かの後のように伺える。
試してみようか、どうなるか。
いいじゃないか、慣れているし。
どこにいたって、ひとりだし。
『…迷子になってたの』
「へえ、じゃあ道案内したげよっか?こっちおいで…にしてもほんと可愛いね君?お兄さんすごい好みのタイプだわ」
ちゅ〜してあげたくなっちゃうなぁ、なぁんて…____
少し、心が傷んだ。
ほんのちょっと、抵抗があった。
それに気づきかけたところで、迫ってくるその人の顔に、思わず顔を背けかけたところで……私の待ち望んだ人は、やって来てはくれなかったのだ。
「道行く少女を拐かそうとする上、強引に迫るとは中々のドS!!!…その手を離した方が身のためだぞ?変態め!」
「!!、へ、変態って誰が…あ、あんたの見た目の方がよっぽど変態だろう!!!?」
ばっ、と離されたのによろめいたところを支えに入られる。
暗くて長い髪を束ね、ドミノマスクをしたその人。
私の身体を引き寄せれば、そのまま私を横抱きにする。
「私の肉便器に何をするか!!成敗してくれようぞ…」
「!?…あ、へ、変態がいる……こりゃ夢だきっと、社会に出ると大変だなぁ…」
ふらふらとどこかへ行ってしまった男の人。
しかし、それから久しく会った彼…青鬼院 蜻蛉は、声を低くして私に言う。
「……どうしてこんな時間に一人で出た?…妖怪だけの問題じゃない、お前はよく分かっているはずだろう」
『…知らない。忘れたから』