第4章 培われしは藍晶石の光輝
社員食堂でたらふくご飯を食べながらでも、彼の過保護は顔を出す。
「リア、それ骨細かいやつだから一旦俺によこせ」
『いや、自分で食べ「ああほら、口の端に餡ついてる」ふ、拭かな…ンム、…っ…』
確かにお世話してとは、言ったけれども。
ここまでなんて一言も言った覚えはないし、彼のような性格の人間にこんなこと望もうとなんてしていなかったはずだ。
それがどうして、こうも私をダメにしようとしてしまうのか。
レディーファーストとか執事とか、そういう域を超えている。
増してやシークレットサービスの仕事ではない、絶対に。
『…口に着いてるのは食べてくれないんだ』
「流石にここでキスすんのはあれだろうと思って」
『……最初許可も取らずに白昼堂々公共の場でいきなりしてきたくせに』
根に持っている…というよりは、今しないのに少し腹が立った。
意識させるようなことしてくるくせにって。
だいたいこんなことしてくるくせして恋人らしいことしないんだもの、この人。
自分の部下の前だからっていうのもあるのかもしれないけれど…唇に触れたり、するくせに。
「後悔はしてねえけどな。お前のこと手放す気ねーし」
『それ開き直ってるだけでしょ。いいからとっととキスくらいしなさいよ意気地無し』
「てめ、…ああ?何が意気地無しだ、手前の為を思って俺は『じゃあ変に私に触れないようにして。特に春前から今の時期にかけては、絶対に』……お前もしかして半端なく意識しちまうの?さっきのあれだけでも」
『しない人は黙っててください。責任取れないんなら関わんないで、その方がマシ』
意識なんてしてるに決まってる。
だって私、昨日からずっとおかしいんだから。
貴方のせいで、ちょっとしたことにドキドキしちゃって仕方ないんだから。
「…執務室に戻ってからでもいいか?あんまりその…お前のああいう顔、他の奴らがいるようなところで見せたくねえんだわ、俺」
『……口説いてんの?』
「おう…そのつもり」
『…ふん。いいわ、そういうことなら…機嫌くらいなおしたげる。私心広いから』
ご飯を摘んで彼の方に向け、今度は私が食べさせていく。
仕方ないな、そこまで言うんなら仕方ない、ええ。
「お前何いきな…っ、ちょ、まだ怒ってんのか!?」
『!!!乙女心の分からん馬鹿上司は死ね!食い倒れろ!!』
嬉しかっただけだし