第4章 培われしは藍晶石の光輝
『人間としての評価なら、私の中じゃあ高い方なんですけどね?でも多分、私がそれで手を貸しちゃったら死罪どころの騒ぎじゃなくなっちゃうでしょうし』
「はい、うちのリアちゃんの意思はこのとおりだから…お引き取り願おうかね?フィッツジェラルド殿」
「組合を敵に回すものじゃあないと思うのだが…忠告はしたからな?」
『お好きにどうぞ、腹ん中の計画まで筒抜けですから安心してください』
お客様のおかえりですー、と手を叩いて合図して、背を向ける。
ああやだやだ、なんで私が引き受けなくちゃなんないのよ。
太股に装着していた仕込み槍を伸ばして元の形態に戻し、即座にフィッツジェラルドさんの喉元に突き立てる。
自分の身の丈以上の長さになるその槍は、私の得物だ。
「これは想像していなかった…やはり、マフィアに来るには用心しておかなければ」
側近の二人は黒蜥蜴がそれぞれついて、銃と刀をこめかみと首元に付けていて。
『シラ切らなくていいんで、手の内見せればどうです?探偵社の弱み握ってるんでしょう?…それなら、マフィアにとって貴方達は利用するに値する』
「ほほう、“匂い”で気が付いたかな?流石は妖___」
つぷ、と刃先に血が滲んだところでフィッツジェラルドさんは口を閉じた。
懸命な判断だ、それ以上をここで続けるようならば、私はこの人を殺さなければならなかった。
「…流石にここじゃあ分が悪い。君に分身でもされては一溜りもないしな」
『まだ言いますか?死にたいんなら早くそう言ってくださいな』
「何を言うか、俺と君との仲だろう?俺は君のことを評価しているんだぞ、今も…昔も」
…本心なんだよな、これが。
しかも、割と私が嬉しくなってしまうような…力とか能力とかだけじゃない、私自身を見て本当に尊敬してくれているような。
『その意気に免じて見逃して差し上げますから…早く、帰って。私、争わなくてもいいなら貴方とはこんな風にしたくないの』
彼の捜し物を、探しだしてしまうわけにはいかない。
せめて、彼の求めるものが、もっと普遍的で…他の誰にも、なんの影響も及ぼさないような、平凡なものであったなら。
力くらい、貸していた。
「その様子だと君の優しさはやはり健在らしい。ポートマフィアが嫌になったら、是非うちに駆け込んでくることだな。俺でも十分、君を匿うことはできるのだから」