第4章 培われしは藍晶石の光輝
今日、ポートマフィアの首領 森鴎外を訪ねて来たのは、海外の異能組織こと組合の長。
側近を二人率いてやってきたその人は、私とは何度目かの面識になる人だ。
「これはこれはプレジデントホリ……ほ…、オグリ??」
『森です』
「それだ、流石は白縹君。早く俺の組織に入らないか?」
『ご冗談を仰いますね、その話何回お断りすれば気が済みます?悪いですが私、貴方の欲しいもののために能力を使うつもりも手伝うつもりもありませんから』
ニコニコとした空間だ。
心は全く穏やかではないが。
静かに流れる私と相手との空気に、その場で立ち会っていた黒蜥蜴の百人長 広津柳浪さんと、二人の十人長 芥川銀さん、そしておなじみ立原君が冷や冷やしているのが伝わってくる。
首領の側近として、敵になるやもしれない相手の目の前に幹部を出すわけにもいかずこの面子になっているのだが。
「まあいい、これは組織を束ねる者同士の取引だからな…どうだ?プレジデント モリ、白縹君をうちに引渡してはくれないかね。そうしてくれれば、礼金としてリカント以上の金を積もう」
「ふふ、生憎だが私に少女を売る趣味はなくてねぇ…そのために必死のお願いでうちの構成員になってもらっているんだよ、こっちも。お金じゃあげられないな」
『売るつもりだったらこの場で殺してました』
「おや怖い」
笑えねぇ、全っ然笑えねぇよそれ
立原君の悲痛な叫びが聴こえてくる。
やっぱり面白いなこの子。
「ま、リアちゃんにはうそも誤魔化しも通じないしね。そういうわけだけど…ご要件は?」
「話が早いな、そう急かすものじゃないぞ?こういう話は…お望み通りに単刀直入に言おうか。異能開業許可証を、渡してもらえんかね」
「お断りします」
「今日は振られてばかりだなぁ、俺は」
何やら探偵社にも断られてきたらしい。
この人も大変ね、よくそこまであっちにこっちに動けるわ。
『…助言しておくと、あんまり挑発しない方がいいですよ?フィッツジェラルドさん。恐らく貴方の部下達…やりようによっては私一人でも相手、できますし』
「!…ほう?これはこれは、好戦的になったものだ。こちら側には君の許嫁だっているのだが?」
『残念だけれどその話はもう無効よ、私はもう“あの家”の人間じゃない。それに今結婚を前提に交際してる人いるから』
「なんて土産話だ…悲しいな」