第4章 培われしは藍晶石の光輝
ショッピングモールを巡り巡って、着せ替え人形にされつつ彼の心ゆくまま買い物を楽しんでいく。
なんで与えられてる私よりもこの人の方が嬉しそうなんだろう…それに越したことはないけれど。
デートっていうか…なんだろう。
家族でお出かけするって、こういう感じなのかな、なんて。
見渡してみれば、子連れの家族も勿論多い。
友達同士、恋人同士、グループで…たくさんの人が往来する。
服、嫌いじゃないし選んでもらうのは嬉しいけど。
私はそれより、“ああいうの”がいいなって。
『…ぃな、』
「ん?…どうした?」
『え…、あ、なんでも』
「そうか。転ばねぇように前見て歩けよ」
私に合わせた速度で歩いてくれる彼の、相も変わらず手袋を付けた手が目に入る。
…まだそんなに深い関係じゃ、ないだろう。
私なんかが踏み込んでいいような存在なはずがない。
けれど、彼と触れ合っているのは私にとっては嬉しくて…名前も知らない他の人達に、“そういう風に”見られたかったり。
まあ、彼の気持ちが着いてこないのに私からするだなんてことはありえないのだけれど。
手袋つけとかなきゃ、怖いみたいだし。
「次は首領の御用達の……、…なぁ、やっぱり元気なくないか?ずっと何か考え込んでるように見えっけど」
『?考え込んでないよ』
「…どっか行きたいところあるとかじゃなくて?」
『私そんなに何も知らないもの』
ふつうに、当たり障りのないように、返していかなきゃ。
違和感を持たれたら、おかしな子って思われちゃう。
「じゃあ何かしたいことは?」
『…中原さんとお出かけできてるだけで、十分だから』
「………寂しそうな目ぇしてるんですけど?お嬢様」
『眼科にでも行ってきたらどうで…っ、?な、何??』
突然、休憩スペースのような一角で腰を屈めて、私と目線を合わせる中也。
それにドキリとして目を逸らすと、こっち向け、と促される。
「お前の表情くらい見分けつくようにはなってんだからな?…ちゃんと俺の目見て、ほんとのこと教えてくれればいいから。俺に遠慮したらデート切り上げ……嘘ついたらお前とこれから出かけない」
きゅう、と胸が締め付けられる。
なにそれ…なんで、そんなことになるの。
私、貴方とお出かけしてこんなに…こんなに、貴方のこと想ってるのに。
私、何も悪いことしてないはずなのに。