第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
驚く程によく回るその頭でとっとと仕事を片付けられてしまい、実質リアのおかげですぐに終わってしまった仕事。
入力も早いことこの上ない、なんだこいつ、天才か。
「お前どこでそんなタイピング技術…」
『…ネトゲ』
「あー…ガチ勢っぽいなお前」
『嘘だけど』
本気で信じた数秒前の自分を頭の中でぶん殴った。
こういうところまで糞野郎そっくりじゃねえか。
「お前実は俺の事嫌いだろ」
『太宰さんも中原さんのこと大好きだと思うけど?』
「…もしかして心読んだ?」
『読まなくてもわかるよこれくらい、中原さん単純だもの』
横浜にはこういう奴が多いのだろうか。
いや、俺が知らないだけでこんな奴はそこら中にうようよと…いや、いない、こいつら以外に俺は知らない。
顔は広い方だとは思うがこんな屈辱、こいつら以外に有り得ない。
「俺が単純ねぇ……んじゃ、俺が今お前に対してなんて思ってるか当ててみ」
『こいつ太宰のクソ鯖みてぇだな』
「あながち間違ってねぇのが余計に腹立つわ。じゃなくて、そういうんじゃなくて」
『…よく分かんない餓鬼?』
最初の頃は…いや、少し前までそうだったよ、そういえば。
言いかけて、やめておいた。
よくよく考えてみればお前の方がもっともっと単純じゃあないかと、気が付いたのだ。
「いんや、割と甘えたがりだし人懐っこい女の子ってところだ」
『…どこが?』
「今俺の膝の上で絶賛一緒に仕事してた奴の言うセリフがそれか」
結局ベッドに入ってるのにくっついてっし。
『私そんなに軽い女に見えてる?』
「あ?…ああ、勘違いすんな、全員にっていうアレじゃなくて、俺に向けられてるもんしか言ってねえからな?」
『……なんで懐いてるって思うの?』
「だってお前、うちに入った時点からずっと俺にだけそんな感じの態度だったじゃねえか」
面食らったような顔をして、少女は気が付いていなかったのか…それとも俺が気が付くとは思っていなかったのか、静止する。
「よくよく考えりゃ、だからこそのあの感じなのかと思ってな。なんとも思わないどころか嫌ってるような相手に一々突っかかったり、触発するような真似しねぇだろ」
まるで、子供が気を引きたがっているような…そういう様子に思えてならなくなってきて。
そうか…こいつ、子供なのか。
『…変態』
「なんでだよ阿呆」