第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
『で、いつまでこっち見ないわけ』
「あ?何が」
『今日着替えてから一向にこっち向かないじゃない。しばいていい?』
「…向いてるけど」
目が合わないし。
他の子とは全然普通なくせに。
…凜々蝶ちゃんのことは普通に見てるくせに。
『ふぅん?あっそ…そんなにお気に召さなかったんなら脱いでもいいけど』
「はぁ!?お前は何をまた…っ」
『だって見れたものじゃないんでしょ?想像してなかった感じになってがっかりしちゃったんでしょ、すいませんでしたね』
「一言も言ってねぇだろがそんなこと!!?」
『じゃあなんで他の子のことばっかり見てるのよ』
見てねぇよと即座に反論されるも、私からしてみればそう映る。
いつまで経っても…他の子ばっかり。
『じゃあこの格好に感想のひとつでも言えばどうなのよ、それでも私のフィアンセ自称するわけ??だっさ!!』
「な゛ッッ!!!!?」
言い切ってやってから腕を組んでふんぞり返る。
我ながら言いがかりのようなものだ…貴方は私のなんでしょうって、口で言えたらどれだけ楽なんだろう。
言えない、そんなこと。
重たいし…恥ずかしいし。
「リア?そんな人と婚約するのはやめておきませんか?」
『…婚約もなくなっちゃったら、もっとリアのこと見てくれなくなっちゃうの』
「は…おま、……リア…?」
『………リアのことちゃんと見た?』
「……見れてない」
ほら、やっぱり見るの躊躇ってるじゃない。
なんて追い打ちをかけようとした瞬間のこと。
「だって、あんまり綺麗だし…見すぎて気持ち悪がられたっていけねぇし」
『…私もう用事終わったし帰るわ、じゃあね中原さんまたいつか』
くるりと踵を返した瞬間に頭を掴まれる。
「待てよリア、お前それ俺の事家に入れる気あるか?なぁ…風邪ひいてんだ、そんなに無理すんなよ、送ってってやっからよォ」
『無理とかしてな、…ッ…、?』
クラリと体がよろめくのを予期したかのように支えに入られ、抱きとめられる。
あんまり、体振っちゃいけなかったのかしら。
いや、でも私は熱くらいのもの…今まで、いくらでも…
「…御狐神、やっぱこいつ連れて帰るわ。この懇親会も挨拶終わったらもう用ねぇし」
「左様ですか。かしこまりました…リア、貴女また無理言いましたね?次それしたら漢方薬用意しますよ」
漢方薬は…やだなぁ