第1章 プロローグ
ファミリーの一人娘、の印象を誰かに聞いてみるといい。その人は必ず、
「はお淑やかなお方だ。あの人がボスだとは思えない」
と、言うだろう。
もちろん、私はそうしたかった訳では無い。当時12歳ながらも、ファミリーを率いようとしたのだ。しかし、それを止めたのが、
「お嬢、今日の授業はどうだった?」
「確か、ダンスとマナーでしたよね?」
この、そらるとまふまふだ。
この二人は側近という地位を最大限に用いり、私をファミリーから遠ざけた。勿論、二人の考えも分かる。12歳の小娘がファミリーを率いるなんて無謀だ。
しかし、彼らの私に対する扱いはいつまでも子供のまま。何も変わらない。
『今日の授業も為になったわ。ダンスでは、自分では気づけない細かい所を直して頂いたの』
「そう、それはよかったね」
「今日のお茶菓子はどうでした? 僕がメイドに出してねって頼んだんですけど」
『あれはまふまふが選んでくれたの?! あのマドレーヌ、とっても美味しかったわ』
まあ、私の演技のせいというのも認める。
だが、クロたちにしか見せられない素の私を認めてくれる人も他に欲しいものだ。
「お嬢、この後、談話室に来てくれる?」
『談話室? ここじゃ駄目なの?』
「お会いさせたい人達がいるんです」
もう対面か。思っていたよりかなり早い。天月の予想では、彼らに伝わるのが今日の夜だったはずだ。
『分かったわ』