第6章 賽は投げられた
彼の指示で、私の体勢を変える。
左手で胸の辺りを抑えられ、右手で首にナイフを当てられた。
うらたぬきとセンラは動く事が出来ない。私の身に何かあった方が更に大事になるからだろう。
「様を離してくれへん? 要求はなんです? 暗殺ではないんでしょ」
センラがそう問う。
しかし、彼の反応はない。
私の両手は動く。
これなら、太もものホルスターにも手が届く。
彼の力が緩んだ一瞬、私はホルスターから拳銃を抜き、彼に突きつけた。
もう彼の左手の中に私はいない。軽く首が切れた気がするが、気にしない。
これくらいの痛みなら耐えられる。
『只の小娘だと侮らないで欲しいわ。
私だって、自分の身ぐらい守れるのよ』
彼は私を連れ去るのを不可能と考えたのか、壁を登り、逃走する。
うらたぬきとセンラが彼を撃とうとするが、手で制した。
深追いする必要はない。
これでいい。
「様、申し訳ありませんでした。俺達は護衛だったのに」
「力不足で申し訳ありません」
『ねぇ、貴方達はなんの為に私の傍にいるのよ。なんの為に私は部屋から出れないのよ
安全の為? 私の事を守れていないじゃない!
もういいわ。護衛なんて要らない!誰も部屋に入って来ないで!』
彼らの謝罪の言葉は聞かない。
私は怒ればいい。
これでいい。
私は自分の部屋に行けばいい。
心が痛い。こうなったのは私が原因なのに。