第6章 賽は投げられた
「雨が降ってきそうですねー」
『確か、明日からは雨だったかしら?』
「はい、そうです。しばらく雨が続きそうですね」
『ちょうど花が咲いたばかりなのに、すぐに散ってしまいそうだわ』
狙撃されにくい中庭で、散歩をしていた。護衛は予定通り、うらたぬきとセンラだ。
私は二人から離れ、端にある花壇に向かった。
腰ほどの高さのそこに腰掛け、小さな花を手に取った。
二人が私の近くに来ようとした時、風切り音がした。
上から聞こえてくるその音、私達三人は上を見上げた。
黒い服を纏った男が落ちてくる。
彼は私を小脇に抱え、その場から離れようとする。
『い、いや! 』
「様!」
「お前、何もんや!」
二人は逃がさぬように私達を囲う。
私が暴れようとすると、首筋にナイフを当てられた。
恐怖の余り、動きを止める。
死を身近に感じる。
ジリジリと、二人は距離を詰めてくる。
ここは四方を建物に囲まれている。彼は横にずれるが、壁際に来ただけだ。
完全に私達の動きが止まる。
膠着状態だろう。彼も、センラ達も、動く事が出来ない。