第5章 不穏な空気の中
うらたぬきside
『牢屋に入れておけ、どこのネズミか調べろ』
今日も、また侵入者を捕らえた。
様の計画では、ここまで増える予定ではなかったはずだ。
よっぽど、現在のファミリーの体制に不満を持っている奴が多いんだろう。
まあ、仕方ないか。
側近はそらるさんとまふまふさん、そして俺達。
明らかに古参の幹部の面目は丸潰れだろう。
だから、今の侵入者が多い時を狙い、刺客を送り込んでいる。
あわよくば、自分がボスとなるように。
まあ、そんな事はさせない。
先代の遺志を果たす為にも、あの御方を護る為にも。
認めてしまえば早かった。
俺が様に抱いている気持ちは、庇護欲であり独占欲なんだろう。
自分の手で護り、隠してしまいたい。
こんな血生臭い世界ではなく、もっと安全な世界で穏やかに過ごしたい。
これは恋だろう。
恋なんて気持ちは知ってると思っていた。
愛しいなんて気持ちは知ってると思っていた。
だけど、今の気持ちは今までのと比べようがない。
だからこそ、様が危険に身を晒すのを止めたい。
だけど、止められない。
自分が護衛である事が疎ましい。
一番近くに居れるのに、作戦の為、彼女を護ることは許されないから。