第5章 不穏な空気の中
センラside
「ふー、疲れた」
そんな独り言を呟きながら、車のエンジンをかける。
今日は、本当は様と会食の予定やった。やけど、侵入者と暗殺者が増えている事をふまえ、俺だけが参加することになった。
あらかじめ連絡を入れておいたとはいえ、あいつらの落胆の様子は凄かった。どれだけ俺に興味がなかったのかがよく分かる。
まあ、切り替えて俺を狙ってきたが。
何が娘の友達だ?仲良くして欲しい? 狙いは俺の地位やろ。
でも、あいつらのコネクションは使えるため、ずっと笑顔は浮かべていたが。
今日は頬筋が筋肉痛になりそうやわ。
でも、良いもんは買えた。
俺は目線をちらりと助手席に置かれている物に向ける。
小さい白い箱。
中身は様の好物らしい、ショートケーキ。
会食に行けなくなった様が余りに落ち込まれとったから、そらるさんに原因を聞いてみた。
帰ってきた答えは、
「そこはお嬢が気に入ってるショートケーキを出す店だから」
そう聞いてしまえば、買わないわけにはいかんやろ。
やから、買ってしまっているんやけど。
帰ったらちょうどおやつ時やし、様も喜んでくれるはずや。
なんやろ、少し俺らしくない気がする