第5章 不穏な空気の中
コンコン
急にノックの音がなり、三人が少し警戒態勢に入る。
「センラです。入っていいですか?」
『どうぞ』
その声を聞き、許可を出す。
ドアが開き、センラが入ってきた。
三人は緊張を解き、またお菓子に興味を戻した。
侵入者の可能性があったからだろう。
「えー、みんな美味しそうなん食べとるやん。センラにもちょーだい」
『いいけど、その箱は何?』
「これはですねー、お土産ですよ。
そらるさんとまふまふさんに頼まれたんです、買うならこれにって。はい、どうぞ」
センラから紙袋を受け取る。
書かれているのはセンラが行ったレストランの名前。
もしかしてこれは⋯⋯
『ショートケーキ!』
「これが一番好きなんですやろ?
お二人から聞きました。多分、拗ねてるやろうからって」
『一言余計よ。でも、ありがとう。
クロ、切り分けてくれる?』
「はい、分かりました」
クロに箱を渡す。
クロはそれを持って一度下がる。
メイド用の部屋で切り分けるつもりなんだろう。
四人の視線が少し痛い。
私らしくもなく、はしゃいでしまった。それが珍しいのだろう。
でも、あのお店のショートケーキが一番好きなのだ。少しくらい許してほしい。
「様は甘いもんが好きなんやね、僕も好きやで」
『辛いものより好きよ。甘い物は幸せな気持ちになるもの。
それに、美味しいものを色々頂くからもあるわね』
「様はなんのお菓子が好きなん?」
『そうね、ショートケーキは好きよ。
他にはよくフィナンシェとかの焼き菓子系もよく食べるわね』
話しているうちに、クロがお盆を持ってこちらに来る。
お盆の上にはきれいに切られたショートケーキが並んでいた。
「皆様、どうぞ」
そう言ってクロはテーブルにショートケーキを並べた。
『ねぇクロ、ニルギリはある?』
「ええ、ありますよ。入れ直しましょうか?」
『んー、やっぱり辞めておくわ。今のセイロンティーでも合うし』