• テキストサイズ

お嬢と孔雀【歌い手】

第5章 不穏な空気の中


うらたぬきを味方に引き込み、数日が経った。


パーティーの時に約束した食事会は、侵入者が多い為欠席をするように、そらるとまふまふに言われた。


だが、相手はセンラだけでも良いと言ったので、約束は取り付けた。


いま、センラはその食事会に行っている。


私はというと、ほかの三人とスイーツ大会だ。






「ちょ、うらさん、それ俺のカップケーキ」


「早いもの勝ちだろ」


「まだまだあるんやから焦んなって」


『坂田、こっちのも美味しいわよ』





こんな感じで食べまくっている。
カロリーは気にしない事にした。
今、私は猛烈に悔しいのだ。





「様、どーして急にこんな事を?」


『ちょっと苛立っただけよ』


「苛立った? どうされたん?」


「そういや、今日センラが行ってるレストランって、パーティーの時に様が話されてましたね。⋯⋯⋯⋯そういう事ですか⋯⋯」





うらたぬきが私の事を呆れたように見てくる。
私はそれを無視し、バームクーヘンを口に運んだ。


そんな私達を見て、坂田が浦田に問いかけた。





「そういう事ってどーゆー事なん?」




うらたぬきはちらちらと私を見ながら言葉を紡ぐ。
私を怒らせないよう、言葉も選んでいるみたいだ。




「あーー、えっとな、今日センラが行ってるレストランはな、様のな、お気に入りなんだよ。だからだ」


「あー、なるほど。意外と様も⋯⋯」


『何よ、志麻?文句あるの?』


「いや、別にないですよ」


「あーなるほど! 様はそのレストランにセンラだけ行ったんが羨ましんやね!」


「ちょ、馬鹿、坂田!」


「え、そうちゃうの?」


「いや、多分そうやねんけどな、なんの為にうらさんがオブラートに包んだんや!」


「おい、志麻も!」





三人とも、恐る恐る私の顔を覗き込んでくる。
私はバームクーヘンを飲み込むと、わざとらしい笑顔を作った。




『ん、どうかしたの?何かあった?』


「いえ、何も無いです」

「うんうん、なんもないです」

「様、このマドレーヌはどうですか?」





志麻からマドレーヌを受け取り、口に入れる。
うん、美味しい。やっぱりここのマドレーヌはいい。


/ 107ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp